SSS

□Take It Easy
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まさか土方が土足で上がってくるとは思わなかったから、銀時はぽかんと口を開けてそれをただ見つめるしかできなかった。もちろん、そのあと倒れるように抱きついてきたのはちゃんと受けとめてやったけれど。

「オイオイ、どうしたの土方くん」
「…んー」

土方はくぐもった声を上げるだけでびくともしない。

「ひーじーかーたー」
「…ふろ」
「ほ?」
「…疲れています」

疲れたので、風呂に入れてください。

土方はゆっくりと、しかしはっきりとした口調でそう言った。銀時は土方を抱えて、すぐさま風呂に飛んで行った。にやついているのは、たぶんバレていないだろう。弱っている土方は希少価値があって、本当に可愛い。

蛇口をめいいっぱいにひねって、急いで湯をためる。土方のワイシャツのボタンに手を伸ばしても、たいして嫌がりはしなかった。大人しくされるがままの土方、おもしろい。

「さあ土方くん、銀さんが髪の毛を洗ってやろう」

土方を湯船のなかに入れて、自分は床に座って、頭を洗う。かゆいところはありませんか、なんて聞いてみると、ないです、とやけに素直な返事を寄越してくる。今日はとくべつ甘えたい日なのかもしれない。

「綺麗な髪してんねホント」
「四日洗ってない」
「あら、キレイ好きだろお前」
「四日寝てない。四日ほとんど食ってない。だから来た」
「どしたん、何かでかい仕事?」
「今朝終わった。今夜と明日は非番」
「よし、わかった」

来てくれてありがとう、と額にちゅっと口づけると、嬉しそうな土方と目が合った。

「じゃあ、風呂あがったらドライアーの風に揺られて、銀さんのマッサージで気持ちよくなって、まあ気持ちいいことは明日にでも回して、今夜は俺の布団で仲良くおねんねコースだな」
「よろしくお願いします」
「はい、あ、じゃあ目ェつむってろ、流すから」

土方は言われた通りに目を閉じる。濡れた長いまつげに、むくりとわいてくる性欲を、何とか理性でおさえつけた。

「でもアレだな土方、あの足どりでちゃんとここに来たのはえらいな。そんで、来て大正解だろ」
「ここならタダで甘やかせてもらえると聞いて」
「だれから?」
「お宅の従業員さんに」
「あぁ、帰って来ないと思ったら。だからか」
「店主さんをしばらく貸してくれるっていうから」
「お前が相手ならいくらでも。あぁそうだ土方」

一度口を閉じた銀時に、目だけで土方が続きを促す。

「お前は、そうやって、がぁーっと忙しく働いてな、その後は、たまにウチに来て息抜きをするんだぞ。その繰り返しでいいんだ。今のであってる。大丈夫」
「…ならいい」

土方は目を閉じて、少し笑った。







気楽にやれよ。

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