SSS

□Keep to the Right
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先程から何度も右肩が当たって、土方は不快に思っていた。これが恋人じゃなかったら、すぐに斬っているところである。
銀時が土方のすぐ右を歩いていた。歩道と車道の間にガードレールがない道だったから、それはそれはすぐ近くを。電柱なんかがあると歩道側の土方は身体を縦にして銀時とそれとの間を通らなければならなくなる。狭かった。

「なんだ落ち着きねぇな、手ェ繋ぎてぇの?」

至近距離で微笑む顔が腹立たしい。
肩同士が重なるほど近くに、自分と同じか、それより少しカサのある男がいるのだ。うっとうしいことこの上ない。それも、土方が何も言っていないのに手を繋いでくるあたり。
刀を握る右手をとられたのはミスだ。

「…おい」

不快感マックスの声を出したつもりだが、この呑気な男は全く気づかない。機嫌がいいのか鼻歌まで出てきてしまっている。

「右に来んな」
「なんで」
「刀」
「いいじゃん、銀さんいるんだから」
「じゃあもうちょっと離れろ」
「副長さんは狙われやすいからな、離れちゃだめだ」
「じゃあ右側寄越せや」
「俺はな、土方」

銀時は嬉しそうに土方を見た。

「味のこだわりとか服のこだわりとか、そんな玄人クセェもんはあんまねぇけどよ、どうしても恋人は、車道側に歩かせたくねぇんだよ」
「…ふうん」
「ね、わかって。いいこだから」
「はぁ、そうですか」
「そうなんです」

土方はそれから何も言わなかった。
なんとなく、心が満足した気がしたから。




右側通行

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