SSS

□男前と美人さん
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スローモーションで、土方がまばたきをする。その長いまつげを動かして、ゆっくりと。
土方の顔が整っているというのは宇宙共通の事実だ。銀時もかなりの面食いだが、今まで気になったことがある人間のなかでダントツの一番だ。もちろん、中身だって一番なのだけれど。

「…うわー…」

綺麗だ。どこをとったって、綺麗だ。
それが恋愛のマジックとかいうものだとしても、やっぱり土方は美人だった。
少し前から、土方は副長室の縁側に座って、庭にやって来ていた鳥を眺めていた。その土方の隣で、銀時は頭を90度左にひねって、ずっと彼を見ている。明日首の筋がおかしくなっていたら、間違いなくこれが原因だ。

…これが、俺の恋人なのか。
はあ、贅沢してんなあ、俺。
月夜あたりに紹介すれば、ぜひ吉原にと言うかもしれない。とんでもない上玉になるのだろう。

黒い髪と、透きぬけるような白い肌。そのコントラストは凶器になるほどの美しさだ。その肌が、夜になれば銀時によって薄く染まるのだ。またまた綺麗なピンク色に。

「うあああ」

銀時は後ろへひっくり返って、一人奇声をあげた。冷静になって考えてみれば、自分はなんて恋人をもっているのだろうかと今さらになってそのありがたさに気がついた。
美人姉妹だとか、美人女将だとか、ときどきテレビなんかで見るが銀時は土方以上の美人を目にしたことがないし、街中インタビューでは男たちが「いやーやっぱ顔より中身っすよね」とか言っているが土方は顔も中身も完璧だ。少し恥ずかしがり屋だけれども。

どうりで万事屋が貧乏なわけだ。土方みたいな恋人がいるということに運を使い果たしてしまった。やはり神さまは平等である。

「はぁ、まぁそれでも満足だけどな」

土方が自分の手から離れなければいい。多少の貧乏暮らしは、新八や神楽には悪いが辛抱してもらおう。

「なに一人で騒いでんだ」

寝転んだ銀時をのぞきこむようにして土方が口を開いた。下から見上げる彼も綺麗だ。

「土方があんまり美人だから、どうしようかと思って」
「口説いてんのか?なんだよその女相手に言うみたいなの」
「いやいや、そこらの女とは比べ物にならねぇくらいの別嬪さんだからねお前」
「はあ、言われ慣れてるからあんまときめかねぇな。つーかそれ言ってくるヤツほんと頭おかしいと思うわ」
「ああもう何かさ、なんで顔って服からはみ出てるんだろうね。土方の顔は俺だけに見えたらいいのにとか思っちまう」
「ばかやろ」
「あぁ、俺ばかなんだと思う」
「末期だろ」
「ね、ほんとに。お前、俺を末期ばかにさせてどうするつもりだ」

真剣な顔で言った銀時がおかしかったのか、土方が笑った。

「お前は真面目になったら結構アレだから、ばかになってるくらいがちょうどいいんだ」
「アレってなに、イケメン?」
「なんで俺は別嬪さんで、お前はイケメンなんだろな」
「お前が美人で別嬪さんで、俺が男前でイケメンだからだ」
「ふうん」
「なあ美人さん、」
「ああ?」
「男前の銀さんとちゅーしよう、うん、後のことはそれから考えよう」
「なんの話だよ、てか言い方が男前じゃねぇ」
「いいから」

白い肌が染まって、銀時は満足した。

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