SSS

□Serve you right.
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土方が近藤を回収しに行くと、銀時が一緒になって飲んだくれていた。お妙の働くスナックである。

「そしたらさあ、恥ずかしがっちゃってあの子、もう銀さん理性と戦うのに必死でえ」

きゃー、なんて言って、女たちが喜ぶ。輪っかの真ん中にいるのは近藤もだが、やはり彼女たちの目は銀時へ。その銀時は土方に気づいて、手を振った。土方は無視。

「…近藤さん、アンタいつまで飲んでんだ、帰るぞ」
「うえ?トシ?」
「そーだよ、トシだよ」
「おーもうそんな時間か、お妙さん今日は」

今日のお礼を言いにお妙に近づいていく近藤。彼がぶっ飛ばされていくのを見ながら、銀時は土方の肩に腕を回した。土方の冷ややかな視線には動じない。

「オメーほんとはアレだろ、ゴリラ迎えにくることにして俺迎えにきたんだろ」
「自意識過剰も甚だしいですね坂田さん」
「なーゴリラはいいからさあ、俺んち来いよ」
「結構。飲んだくれが触んな」

ぺし、と銀時の腕を叩いて、土方は近藤を引きずっていく。お妙が店の外まで見送りにやって来た。

「いつもゴリラ捕獲お疲れ様です、ついでにそこの酔っ払いも」
「土方くーん俺も連れて帰ってー」

タイミングよく千鳥足の銀時が出てきて、土方に抱きつく。女の匂いがするが、土方は眉ひとつ動かさない。銀時越しにお妙が言う。

「大変ですね」
「…あぁ」
「妬きません?」
「べつに」
「今度土方さんだけでいらっしゃってみませんか、仕返しに」

土方はふっと小さく笑った。

「…アンタが相手してくれんなら」
「あら、ゴリラと銀さんの嫉妬、どっちもなんて」
「妬くのかねえ、こいつは」
「もちろん、頭の中土方さんでいっぱいですもの、店でしゃべることなんてそれしかありませんよ」
「…こいつも、ヤな奴だな」

気遣うように、土方が上目遣いにお妙を見た。お妙の心臓が跳ね上がる。土方は、何を思っているのだろうか。

「…私が銀さんを、とでも?まさか、嫌ですよこんなちゃらんぽらん」

土方は薄く笑って、視線を落とす。

「…俺が捨てられたら、アンタにこいつを拾って欲しかったんだけどな」
「どうして」
「それなら、諦めがつくだろ」

いい人だから、なんていう言葉を土方は不意に寄越してくる。銀時だけ喜ばせていりゃいいのに。恐ろしい男だ。

「まさか、銀さんが別れるなんて言うはずないでしょ」
「じゃあ、俺がしんだら」
「…縁起でもないこと言わないでくださいよ。それに、私、そんな飲んだくれ、すぐにフってやります」

あなたたちは勝手に幸せになってたらいいわ、なんて言わないけれど。この気持ちはきっと、二人がすごく上手くいっていることへの憧れと妬み。

「そうか、」
「土方ァ俺がお前を手放すわけねえだろー?そういう心配も可愛いなあ、好きだぞー」
「うわ起きてやがった」
「銀さん一人で帰んの無理だから一緒に帰って、一般市民助けてちょーだい副長さん」
「あーハイハイ」

お妙は気づいている。酔っ払っていながらも、お妙をちらりと見た銀時の目には力があること。こいつは離さねえぞ、とでも言うように。
私にまで牽制して、バカな人。土方さんにフられたって、そのころにはきっと、私も変わってるんだから。せいぜい土方さんを追いかけてうっとうしがられるがいいわ。






ざまあみろ。

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