SSS

□マインドゲーム
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*どこかで聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれない手法で銀土!




銀時は万事屋の社長イスに座って、土方を見た。あいにく土方の機嫌はよろしくない――というより、ただ子供がすねているだけのような、そんな膨れっ面だった。
土方は今ソファの端に座っている。ここ二週間、彼氏を避けつづけたせいで、こうして万事屋まで引っ張りこまれたわけである。

「じゃあ土方、立ってみな」

土方はここへ来てから一度も口をきいていない。何も言わずに銀時をにらんだが、銀時の有無を言わせない視線に大人しく言うことを聞いた。

「じゃあ、お前は俺としゃべりたくないみてぇだから、ルールを決める」

銀時は椅子から立ち上がって、机の前に出た。

「ハイなら前に、いいえなら後ろに一歩動くこと、いいな」

土方は小さく一歩前に出た。付き合ってくれるらしい。

「お前がすねてるのは、この前俺と喧嘩したから?」一歩前へ。
「可愛げがねぇって言われたのが嫌だった?」一歩後退。
「二週間も避けてたのは、俺が嫌になったから?」また後ろへ。
「会いたい気分じゃなかったとか」後退。

土方は銀時からずいぶんと離れて、ドアの近くまで下がっていた。

「じゃあ、俺じゃなくて、自分にいらついてるのか」肯定だ。一歩前に出た。
「俺はあんまり喧嘩の内容覚えてねぇんだ。お前は?」前へ。
「俺も自分に腹が立ってる。あのときはむしゃくしゃしてて、言っちゃいけねぇこと言っちまった」相槌を打つように土方は前進した。
「なあ、たぶん俺が悪かったんだと思う」小さく前に。
「俺のこと嫌いになってねぇ?」肯定。
「仲直り、してくれますか?」一歩前へ。

土方は子供のような楽しそうな顔をして、このゲームに参加している。先ほどの距離はとっくに縮まって、銀時まであと二、三歩といったところか。
もう二人の間で、喧嘩は終わっている。ちゃんと言葉にできないことをゲームにして、遊んでいるだけだった。
銀時は笑って質問する。

「俺のこと、好き?」

土方は一歩前に足を出す。それが床につく前に、銀時は土方に手を伸ばした。
引っ張られてバランスを崩した土方を、銀時はきつく抱きしめた。

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