SSS

□その間、約五秒。
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振り返ると土方の白い手が拳をつくり、銀時のほうへとむかってきていた。目と鼻のさきに拳が突き出されて、空気が一気に動く。鼻が変な形に変えられる前に、銀時は左の手のひらでその拳を受けとめた。さすがは副長、かなり強い力だ。

土方はその拳を全力でくりだしていたのか、身体ごと銀時のほうへ倒れてきた。しかしそれを一瞬でたてなおし、今度はいわゆる「目潰し」の形のように指をまっすぐ伸ばした左手を突き出す。銀時はすばやく動き、その手を払いのける。

両手がだめになったからか、土方は今度は頭突きをかましてくる。少々手荒だが、銀時は手を伸ばして、その顔を手でおおった。そのまま布団に押しつけてやる。土方の頭はちょうど枕のうえに、ぽすっと落ちた。

「この前より大人しいな」

銀時は顔を近づける。
土方との小さな攻防は、万事屋で銀時が土方を押し倒すたびにきまって行われる。というより、土方のほうから一方的にしかけてきていた。

「なに、そんなに抱いてほしい?」
「…うるせぇばか」

土方の全身から力が抜けて、銀時は唇を落とす。

その間、約五秒のお話。

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