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□黒ヤギさんからお手紙
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銀さん、お手紙来てましたよ、と万事屋を出ようとした銀時に新八が声をかけた。ちょうど郵便受けを覗いていた新八は、封筒に入ったラブレターのようなものを渡した。よく万事屋に届く、ダイレクトメールやツケの催促とは違うらしい。こりゃ本物のラブレターか、と少し嬉しくなった銀時だ。

『土方十四郎』

ひっくり返した封筒に、そんな名前が書いてあって、飛び上がった銀時は走り出した。

「土方から愛のラブレターだと!?」

走りながら封を切って、手紙をとりだす。

『坂田銀時さんへ
こんにちは。真選組副長の土方十四郎といいます。坂田さんの話はかねがね聞いておりまして、江戸じゃあ大活躍とのことで。
この前うちの山崎から聞いたんですが、あの吉原の救世主とか言われてるんですか。』

なんだ、もしかして吉原の花魁たちに妬いているのか?あの一件の話をしたことはないが、変に伝わっていると厄介だ。
銀時は屯所へ向かう。

『救世主とか、かっこいいですね。坂田さん強いから、なんでもできますもんね。いやあ、やっぱり元白夜叉さんは違いますね。憧れます。』

あれ、なんか急に褒めだしてる?

『確かに天パはあれですが、しゃきっとしてるとかっこいいと思います。年に一回あるかないかのしゃきっが結構好きです。
あと、木刀とか、いいですよね。彫られている文字とかすごいかっこいいです。やっぱり坂田さんは違うなあと思います。』

ヨイショ?ヨイショだよねこれ?土方こんなこと絶対言わないよね?
屯所はもう目の前だ。手紙は二枚目へ続き、銀時は驚く。どんな長文だってんだ。

『ところで、坂田さんは電球をかえたことがありますか』

いやいや、ところで過ぎるだろ。なんで急に電球の話だよ。

『屯所の電球をLEDにかえることになって、この前隊士たちがかえてたんです。で、俺はそのときうっかり副長室のを頼むのを忘れていまして。そしたら昨日まさかまさかで電球が切れました。それをまた報告するとなんでこの前かえなかったんだ的な空気になるし、めんどくせーとか言われるし、自分でかえろよなーみたいな。知ってます?LEDって、節電になるらしいですよ。万事屋にもぜひ導入してみてください。
それで、その副長室の電気が切れたのが夜で、ほんとにびっくりして』

もう電球のくだりはいいよ!長ぇよ!
銀時は屯所の門をくぐって、警備についている隊士に軽く手をあげる。
手紙はまだ続く。

『で、俺じつは、電球のかえ方しらないんですよね。なんかバチってなったら怖いじゃないですか。感電とか。』

もうお前いい大人だろ!電球かえられねぇ副長とかどうなの!
銀時は廊下を歩く。

『ところで、これ読んだらウチに来ますよね?ついでに、LED買ってきてくれませんか。で、よかったら電球かえてください。
坂田さんはほんとに頼りになる人だと思います。ほんとに。だから長続きがどうのとかの今はやってるLEDをお願いします。』

結局LED買ってきてってことかよォォォ!!まわりくどすぎんだろ!べつにそこまでヨイショしなくても買ってきてやるって!結局ついでがついでじゃなくなってんじゃねぇか!

「土方ァ!」

銀時は副長室の襖を勢いよく開けた。

「あっLED!」
「てめぇ彼氏をLED呼ばわりすんな!まだ買ってねぇよ!」
「ええっ」
「これこの手紙!長ったらしい文章の最後に書くのが悪いんだ!罰として電気屋さんまでお前を連行する!」

ぎゃー、と声をあげた土方の脇に手をはさんで立ち上がらせる。

「あ、でも手紙は嬉しいからまた書いてね」
「じゃあLEDじゃなくて安物にしねぇと」
「お願いの手紙じゃなくて!」

こうして、二人のお遊び半分のデートは始まるのである。

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