SSS
□いいおとこ
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前髪をかきあげて、かーっ気持ちいい、と笑顔になる銀時だ。クーラーのない万事屋はむんむんと暑くていけない。冷水を頭からかぶるのは、やはりいい方法だった。
「土方ー、やっぱりいいぞー」
居間にいる土方は、その暑さに弱っていた。部屋のすみにちょこんと座っている彼にたずねると、そこが一番涼しいのだとか。猫は風通しのいい場所を見つけるのが得意というが、土方も同じだ。
「うわ、濡れたまま寄ってくんなっ」
お前も涼しくなってこい、と土方に近づくと、思春期の女子が父親にするような反応をされる。
「俺いま冷てえぞ、触る?」
「いらねえ!」
一歩近づけば、一歩退かれる。顔を近づけると、目をそらされる。さみしい。
「…わかった、から、ちょっ…離れろ」
「なに、急に恥ずかしがり屋さんか」
かわいいなあ、と余計に土方に近づくことになる。ずずず、と床にひっつくようにして逃げる土方におおいかぶさってのぞきこむと、なんと耳まで赤く染めていた。
「お?どした」
「…いっいや、」
「んー?」
土方が顔を隠して恥ずかしがっている。
「…あのっ」
「はいなんでしょう」
「…あれだ、水もしたたるなんとか」
「いい男か」
「…はいそうです」
「水に濡れた銀さんがかっこいいって言いてえのな?」
なにが理由かわからないが、土方は悔しかったらしく、ぎゃーと吠えて、銀時に抱きついた。