SSS
□結婚
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結婚けっこんと、銀時は最近やたら口にするようになった。ことあるごとに、例えば、ファミレスの順番待ちの名前を書くときだとか(もちろん銀時が率先して「坂田」と書く)、やっぱり結婚は大事だと、と土方を口説きにかかるわけである。
土方はコーヒーを飲みながら言う。
「べつに、俺たちのことはみんな知ってるし、誰も口出しなんかしてこねえだろ。する必要がない」
「銀ちゃん相手にトシちゃん奪ってやろうなんて考えるほどのバカもいないヨ」
そりゃ私だって銀ちゃんとトシちゃんが結婚したらいいと思うけれど。口をいっぱいにして言うのは神楽。
「生死に関わるもんね、土方さんに手なんかだしたら…あ、銀さん、でも奉行所の世話になるようなことだけはやめて下さいね」
新八は眼鏡を押し上げて言った。
「まあまあ皆の諸君、俺の結婚論を聞きたまえ」
銀時はスプーンをおいて、人さし指を立てた。
「いいか、俺と土方がお付き合いをしていることは、江戸の人間は百も承知だ」
「うわ、お前が広めたのか?引くわー」
「土方くん、静かに。…そういうわけで、土方に手を出そうなんて奴はいないし、土方はずっと俺のもんだし、俺たちは幸せに暮らしていくことだろう」
そこで銀時は一呼吸おき、急に立ち上がった。土方はこめかみを押さえてため息をつく。ここはファミレスなのだ。なるべく存在感を消しておこう。
「しかし諸君!」
「はい先生!」
「いい返事だ神楽くん、さて、土方と俺の仲は皆が知っていて、誰も邪魔しないと言った。だがそれはあくまでも暗黙の了解というやつだ」
「ほうほう」
「そこでだ。結婚というものをすれば、俺たちは無敵になる。つまり──」
銀時はテーブルの上にあった土方の手を握り、顔を近づけた。思わず頬を引きつらせた土方だ。
「俺は、お前を法律的に独占してえんだ。だから、結婚しよう」
新手のプロポーズに恥ずかしくなった土方は、ずるずると落ちて、テーブルの下に逃げて小さくなった。