SSS

□未来
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*未来捏造(歴史的なものも)を含みます、ご注意ください。
*管理人の勝手な設定満載です、原作や史実とはかなり異なっております。それぞれ世界観を壊したくないお方はご注意を…。
*銀土の永遠を望んだばっかりにできあがってしまった代物です。二人はずっと幸せですのでバッドエンドとかではないです。

注意書きが大層になりましたが、こんな未来もどうでしょう、てな感じの軽い妄想です。さらっとどうぞ。














それから、土方は銀時が引き取った。万事屋の一員として生活をしている。呼び名を賊軍に変えられた旧幕府軍、そのなかの土方は、土方としてこれからを生きていくことが難しくなった。彼は坂田姓になった。嫁に入ったというより、養子になった形に近かった。

「トシちゃん、風呂あいたヨ」

近藤は沖田をはじめとする元隊士たちをつれて故郷に帰り、道場の先生かなにかをしているそうだ。土方は帰りたがらなかった。あのとき降伏をしてから、土方は近藤に会えなくなっていた。
土方はよく言っていた。「近藤さんに会ったら死にたくなる」、瀕死の状態で戦場から病院へ運ばれた土方は、本人の意思とはちがって、奇跡的に回復したが、それをよく悔やんでいた。近藤とは手紙でやりとりをしている。
居場所のなくなった彼を銀時はすぐに引き取った。そうじゃなかったら、恋人のことも忘れて消えてしまいそうだった。

「土方、いっしょに入ろうぜ」
「やだ、ついてくんなよ」

土方の死にたがり癖にはしばらく悩まされた。なんの責任を背負おうとしているのかはわからなかったが、土方はよく腹を切りたがっていた。
死んだ隊士たちのことを思ってか、自分の武士道に対してか。死んだ人間のことを思ったって、帰ってくるわけないのに。
いつも隠しもっている短刀を取り上げるのにも苦労した。

彼の思いを尊重して、腹を切らせるべきか、無理にでも生かせるか。
銀時は、土方を手放すことがどうしてもできなかった。だから、死なせなかった。できなかった。
土方も日がたつにつれて、だんだんと落ち着いていった。それが救いだった。

「あ、銀さん、桂さん出てますよ」

かつて真選組がニュース番組を独占していたテレビには、政府を立ち上げた一人である桂の姿がよく映るようになった。
難しい話を記者にむかってしている桂は、一度土方を政界にひきいれようとしていた。頭のキレる土方だ、いい仕事をしたにちがいない。土方本人もだが、それには銀時も断った。
あまりにも酷だった。

「トシちゃん風呂いっちまったアル!銀ちゃん、二人で入ったほうが節約できるネ」
「いけね、よそ見しちまった」

脱衣所に入ると、土方は洗濯機の前に座っていた。銀時を待つように。

「待ってたのか、なーんだ土方もいっしょに入りたかったんじゃん」
「…な、あ」

土方が掠れた声を出した。

「ん?」
「…おれ、は…いいんだよな…?…生きてて、これでいいんだよな」
「うん、それでいいんだよ?」

あぁ、あれから、このやりとりを一体何度したことか。銀時の胸はぎゅっとつかまれたように痛んだ。

「…じゃあ、」

土方は大きく息を吸った。震える息を。

「…近く、の、和菓子屋さんが、…バイトの、…俺に、バイトをしないかって…」
「うん」
「…バイトを、しようかと思ってるんだ…しても、いいか」

土方の言葉に、銀時は目を大きく開けて黙った。
土方が、積極的なことを言ったのは初めてだった。手から力が抜けて、着替えの下着が落ちる。膝から崩れた銀時は、そのまま土方を抱き寄せた。

「…ひじかた」
「…うん」

声が震えていて、銀時は自分で笑った。

「…ありがとな」
「なに」
「生きてくれるんだな」
「…まちがってないか」
「まちがってたっていいだろ?少なくとも俺はお前が生きてるって事実に生かされてんだよ。一人の命を守ってんだ、だれもそんな奴に死ねなんて言わねえさ」
「…なら、俺は」

──これからずっと、お世話になります。
銀時がやんわりとやめさせようとしたが、土方は頭を床につけて、そう言った。その日から、土方は、怖くて包丁が持てないのは相変わらずだったけれど、ごく普通の一般人として、和菓子屋のバイトをしばらくしながら、銀時の恋人として生きていった。生死の話は、それからあまりしなくなった。土方は確実に生きていった。

「土方、俺はまちがってないよな、お前、幸せ?」
「…あぁ、まちがってねえ。近藤さんも喜んでた。俺、いつのまにか明日の晩飯に何を作ろうか考えられるようになってた。来週どうするとか、来年の正月とか、未来を期待するようになってた」

土方の言葉が嬉しくて、銀時はよく、土方が眠っている間に一人で泣いた。

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