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□見返り副長美人図
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「副長」
「ああ?」
振り返った土方は眉をこれでもかというくらい寄せている。不快感マックスの表情。そんなに俺に声をかけられるのが嫌ですか副長。山崎は心のなかでうなだれた。
「…書類追加です」
まあ、確かに不快なものを渡しに呼んだのだけれども。土方は舌打ちをしてそれを受け取った。おー怖い怖い。今からこの不機嫌な土方といっしょに見回りだなんて、無事で帰られる自信がない。
「土方さァん」
「あ?総悟か」
今日はめでたく非番の沖田と道端で出会った。くるりと振り返った土方の表情には特に変化なし。
「ちゃんと仕事してやすかィ」
「お前といっしょにすんな」
むっと土方がふくれる。
「そういやァさっき旦那と会いやしたぜ、上手くいきゃあアンタも会えるんじゃねえかィ。あ、上手くもなにも旦那が絶対見つけるとか言ってたっけ」
「なにわけのわかんねえこと言ってんだ」
「そのへんにいやすよ旦那」
「ふーん」
興味なさげなふりをして、実はきょろきょろとあたりを見回している。わかりやすい。本当にこの人は仕事以外じゃ抜けてるな、と、もはや空気と同じ扱いを受けている山崎は思った。
「あ、いたいた!」
後ろから銀時の声がした。
「土方」
振り返った、その時の土方の顔といったら。
山崎は口をぽかんと開けて見とれていた。沖田も同じく、ぱちぱちと瞬きをしながら、土方を見ていた。
口もとにはふにゃっと笑みを浮かべて。柔らかく細められた目の下は、ほんのりピンク色。
あぁ、副長、喜んでる。やっぱ恋人って違うんだ。
あまりにもわかりやすい表情だった。
「なんだ、銀さんに会えてそんなに嬉しいか」
「はあ?」
「まーまー、ちょいとちゅーさせてよ」
「なんだその軽いノリ」
そして、土方をよく知っている銀時も、それに気づいているようだった。お前らとは違うんだよ、とでも言っているような銀時の視線を受ける。肩をすくめてその場を去っていく沖田の後を山崎はあわてて追いかけた。