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□愛想を少々
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とぽとぽ、と水の落ちる心地よい音がする。伏せられた土方のまつ毛が長くて綺麗だ。白い手で急須を傾けている、それだけで絵になるのだからやはり彼は美人だ。

「…どうぞ」
「うむ」

はあ、とため息をついた土方が呆れたといった表情で銀時を眺める。緩む頬を引き締めて、銀時は湯のみを受けとった。そうだ。これをいっぺんやってみたかった。
先日テレビでやっていた時代劇のなかにあった、「旦那に茶を淹れる奥方」のシチュエーションに憧れて、こうして副長室までやって来たのだった。茶を淹れてもらいに。
土方は大人しく付き合うのが得策だろうと思ったのか、憮然としながらも言うことを聞いた。彼のよく知るとおり、断られたところであっさりと帰る銀時ではない。

「うん、うまい」
「あー、そうですか」
「副長さん直々にお茶淹れてもらえる人間がこの世に何人いると思う?俺、すげえ幸せ」
「はあ」
「な、お前やっぱアレだな、愛をこめて淹れると味も違うな。何か入れた?愛とか」

嬉しそうに話す銀時につられて、自然と微笑んだ土方が、肩をすくめた。

「さあ、愛想を少々?」
「さすが俺、その少々の量にも気づいたぞ」
「はいはい、わかったからちょっとそっちいってろよ。仕事中だっての」
「はーい」

銀時はごろりと横になって、土方の後ろ姿を眺めることにした。やはり、持つべきものはしっかりとした美人の嫁である。

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