sss2

□近回り遠回り
1ページ/1ページ

土方の後ろ姿を見つけて、銀時は口角を上げた。遠くで煙草をくゆらせているのが見える。
あれはきっと、沖田あたりに逃げられたな。銀時は迷うことなく左に曲がった。路地裏の中だ。

かぶき町は言わずもがな、銀時にとっては庭のようなものだ。どの道がどこへ繋がっているかくらい知っている。そう、ここを右に曲がって、まっすぐ、もう一度右に曲がれば、ちょうどさっき土方がいたあたりに…。
勢いよく通りに飛び出したが、土方の姿は無かった。
きょろきょろとあたりを見回すと、先ほど銀時がいた方向へ移動していた。おかしい。歩いていた方向は逆なのに。銀時はまた路地裏に潜った。

「これでどうだっ」

再度飛び出す。またいない。今度は一番初めの位置にいた。意地になって、また路地裏へ。

「…あのやろ、遊んでやがる」

うろちょろして、面白がっているのだ、土方は。どうやら先に銀時に気づいていて、全く逆の方向にわざと移動しているようだが…うーん、悔しい。
わかった。路地裏に入ったことはきっとバレているから、今出たところと同じところに行ってやろう。フェイント作戦だ。カウンター攻撃だ。見てろ土方。
くるりと進行方向を変えた銀時は、自信満々に戻っていく。その時、あの香りが鼻をくすぐった。

「え、」

ふわり、と銀時の前方右側から紫煙が流れた。思わず足が止まる。
足音がして、そいつが顔だけ覗かせる。

「あれ、こんなとこで会うとは奇遇ですね?」

確信犯の顔。いたずらが成功した子供みたいに、土方が笑っていた。土方もまた路地裏を、銀時とはかぶらないルートを利用して移動していたのだ。

「…なんだ、お前もここ使ってやがったのか。驚かせてやろうと思ったのによォ」

土方に近づいて、まずはキスをひとつ。

「一応、それなりに路地裏は網羅してるぞ、警察だからな」
「じゃあ今度路地裏デートでもするか」
「なーんか、薄暗いし、ゴミだらけだし、きったねえデートだな」

笑う土方の機嫌はいいらしい。人目につかない場所だから、いつも以上に二人の距離は短かった。

「いいじゃんこの暗さ、なんでも許されるって感じだろ」
「こら、触んな変態」
「へへ、ちょっとやらしい気分」

すっかり路地裏が気に入った銀時は土方を壁に縫いつけて、しばらく堪能することにした。フェイント作戦が結果的に上手くいったのだ。みすみす獲物を逃がすわけにはいかない。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ