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□酔いどれさん
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ずいぶん遅くなるまで、近くの居酒屋さんで久々に四人でご飯を食べていた。神楽ちゃんと道場に帰ると言ったら、じゃあ送って行くかなんて酔っぱらい二人も後ろについてきた。
いつもはだいたい、どうしようもなく酔った銀さんを、そんなに酔っていない土方さんが神楽ちゃんといっしょに引きずって帰ったり、あるいは、疲れて眠ってしまった土方さんを、銀さんが嬉しそうにおんぶして帰ったり。
…この二人が同時に、かなり酔っている、ということがあまりないから、ちょっと恐ろしい。ちゃんと帰れるかな。

「土方ァー手かせよー」
「やだ、お前汗かいてる」
「そんなことないぞー?ほれ、ほれ」
「うわってめ、変なとこ触んなぁっ!んんっ」
「あれえ、感じちゃったあ?」
「斬るぞこらっ」
「うわわ、ちょっ真っ直ぐ歩けって、ほら!」
「ううー手汗ー」

ちらっと後ろを振り返って見ると、手を繋いだ二人が左右にふらふら揺れながらゆっくり歩いていた。ため息をついて神楽ちゃんを見ると、こっちもため息をついて肩をすくめていた。ま、そうですよね。

「そういやあお前、お前このまえのなんだっけ、お誕生日会?」
「江戸城での会議のことか?」
「そうそう、どうだった」
「え、まあ、フツーです」
「フツーってお前、女子高生かお前!何でもかんでもフツーって言ったらいいと思うなよ!」
「うわなにこの人めんどくせー」
「お前な、俺とのセックスをフツーとか言いやがったら俺泣くからな!」

ああもう、銀さんは酔うとすぐこれだ。もう出てきてしまっている。今日の酔いは絶好調らしい。
恥ずかしくないんですか。

「あわわ、お前もうちょっと表現考えろよ子供いるんだぞっ」
「じゃあなんだ、エッチか?エッチって言うのか?かわいこぶった言い方してんじゃねえよ!だいたいなんだよエッチて、お前土方のHとかただのエッチじゃねえか!十四郎のTとかティンコじゃねえか!誘ってんのか!」
「バッカでかい声出すなや!つーかなんだよその頭文字!いちいち変な単語にすんなっ!ばーか!」
「ちなみに坂田のSはスーパーマンのSね、Gはゴッドね」
「あー手ェべとべとするー離してー」
「あっでも土方がエッチとか言うのは可愛いから言ってね、いやん銀さんのエッチー!とか言ってね」

オヤジだ。完全にオヤジだ。こんなのが天下の真選組の副長の彼氏とか世も末だ。

「銀さんのエッチ、ねー…」
「んーどした、眠たい?」
「お腹いっぱいなったからちょっと眠たい」
「なにそれガキみたい、かわいー。てか土方お前可愛い」
「はいはい──っ!?んんっ!んーっ!んーっ!」

振り返るなよ、振り返るな新八。オトリコミ中というやつだ。二人を後ろにしておいてよかった。いくら遅いからって、酔うと所構わず土方さんを襲う癖はいい加減なおすべきだ。

「っこら、あ、んんっ…!」
「…帰ったらたっぷりくれてやっからな…」
「てめっ、酔ってねえだろっ!?」
「あり?ばれた?少しは飲んでたんだけどね、醒めちゃった。だって酔ったお前可愛いんだもん、ちゃんと見たいだろ」

ええっそれでシラフだったんですか銀さん…ますます引きます。

「なんだそれ!俺を酔わせてどうするつもりだ!わー!」
「んー?そうだな、お前にたっぷりどんぐりのエサをやって育ててから喰ってやろうかあー?」
「それ店にあった豚肉の広告…!まさかお前畜産業関係者だったのかっ」
「美味しく喰われろよ」

わー食べられるーとか言って、土方さんが僕たちを通り過ぎて走って逃げていく。いつも神経張ってがんばっている土方さんのストッパーを外してあげるために、銀さんは今日こうして外に連れてきたのかもしれない。酔ったふりもして。

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