sss2

□背くらべ
1ページ/1ページ

「あ、こら身体のばすなって。あご引いて」

ぐい、とあごを持たれて、俺の頭は万事屋の柱に押しつけられた。定規がすとんと頭に乗る。鉛筆が木の柱をなぞる音がすぐ近くに聞こえた。
俺は子供じゃないから動く心配はないのに、両手のふさがっている銀時は俺を身体で押さえつけて固定している。おかげでこっちは酷く圧迫されているのだ。

「土方十四郎、っと。うーんやっぱり俺といっしょか。よし、動いていいぞ」

万事屋の柱には、下から「神楽」、「志村新八」、そして「坂田銀時」と「土方十四郎」。
同じ行に二人の名前は書けないので俺の名前は坂田銀時のすぐ下だ。彼なりの変なプライドだろう。
つまり、そこには背丈のラインが書かれている。子供がするみたいな、昔よく見たアレ。
俺があの道場の柱に押しつけられたときにはもう成長期は過ぎていて、大した成長は見られなかったが、総悟は随分記録しがいのある成長を見せた。得意げに伸び率を自慢する総悟の顔をよく覚えている。
それを思い出して、万事屋の柱を撫でてみる。土方十四郎。ここは鉛筆だけれど、あっちは多分彫っていた気がする。どこかに自分の名前が残っているのって、なんか不思議な感じだ。

「お前んちにも俺の名前書きてえなあ」
「あほか。俺んちじゃねえ、ありゃ幕府のもんだ」
「いいじゃんいいじゃん、ホラ卒業式にあちこち落書きするアレみたいな感じでさ」
「じゃあやってみろよ、すぐに近藤さんが隊士全員の名前を柱に書きだすぜ、お前の名前の上にな」
「ええー、それじゃあ意味がねえんだよなあ…じゃあここにハート書いとこ」

ハートどころか相合い傘だのなんだのを書き始めた銀時に、昔の近藤さんが重なって見えた。それを言うと怒りそうなので黙っておいたけれど。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ