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□Room 505
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その日、銀時は助っ人として一日働いていた。江戸のとあるホテルの従業員として。といっても、やることは部屋の清掃などの簡単なものだ。しかし制服はかっちりとしたスーツに似たものだった。さすがホテルマン、とネクタイに締め付けられながら思った。

高級ホテルではないが、家族づれも多く見えるそれなりのホテル。前払いの報酬もよかった。

「あれ、旦那じゃないですか、こんなとこで会うなんて奇遇ですね」

ホテルのフロント前で出会ったのは山崎だった。聞くと、この近くで会議があるらしく、しばらくここに泊まっているらしい。

「土方もここに?」
「ハイ、あ、申し訳ないんですけど、部屋番号は教えちゃいけないことになってるんで…」
「まさかてめえ一緒の部屋じゃねえだろうな」
「違いますよ!」

呼ばれれば飛んでいける距離ですが、と山崎は手に持っていたボードを振りながら言った。
結局その日一日、土方の姿をホテル内で見かけることはなかった。


そして仕事は終わり、従業員の数も減り客が寝静まる頃。
いつもの着流しに着替えるべくフロントでロッカーの鍵を受け取っていた時、また山崎に会った。今度はたまたまではないらしく。

「これ、副長からなんですけど」
「土方が?」
「旦那にって。あ、中身はもちろん見てないですからね」

銀時に四つ折りの紙を渡した山崎は、おやすみなさい、と言って去って行った。何かノートからちぎったような紙きれ。開いてみる。

『5 0 5』

たったそれだけだった。走り書きのような字。だが、それだけで十分だった。
銀時は小さくガッツポーズをした。今日一日散々取り扱った、三桁の数字。
土方の部屋番号だった。





「土方さま、ルームサービスでーす」

ノックは三回。ふざけて廊下から声をかけてみる。

「…サービス?それはこっちのセリフだな」

部屋の中から伸びた白い手。ネクタイを引っ張られて、煙草の匂いのする空間へ誘われる。挨拶もそこそこに抱き寄せた。
すぐさまベッドに飛んでいくのには、オートロックのドアは好都合だった。

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