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□紫煙呼吸
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「土方ァ」

土方はさっきからずーっと書類と睨めっこだ。何回声をかけても無視ムシ無視。まあ、そんな土方を見ているだけでも俺は満足するんだけどさ。
非番でデートの予定だった今日が急遽書類作成の日になってしまったらしいが、一応ご予約さまの俺が副長室に入り浸るのを許してくれている。

「なー、ちゅーしろって、ちょっとでいいから」

そこで俺は、ちゅーだけして下さい作戦に出ることにした。たぶんちゅーだけで何時間か我慢できる。たぶん。
俺より煙草の方が土方の唇を独占しているなんてこれ以上耐えられないし。

「ちゅー」
「うるせえな」
「な、ちょっとだけだって、気持ち良くしてやるから」
「お前それだけじゃ済まねえからやだ」
「じゃあ俺寝転んでるからお前がやって、俺なんもしねえから」

大の字に広がって土方を待つ。

「…じゃあ、目、つむって。口開けろ」

肩をすくめた土方は少し笑って言った。口を開けるだって?舌でも入れてくれるのか、お前は天使だな。わくわくしながら目を閉じる。
土方が顔を近づける気配を感じた。そして、ふに、と柔らかい唇が当たる感触と──

「…っむ!?ふごっ!うえぇぇぇ」

俺は勢いよく咳き込んで、苦しんだ。
土方が人工呼吸でもするみたいに、俺に煙草の煙を吹きこんだのだ。思いっきり。口から白い煙を吐く俺を悪い顔で喜んで見ている。副流煙どころじゃない。一旦肺に入った煙って、美味しいところ全部味わった後の煙だろ、やっぱり苦えよ。

「ふふ、いい気味だ」

くっくっく、と笑う土方。
ようしわかった。なら今度イチゴ牛乳を口移しで飲ませてやるから覚えてろよ。

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