sss2

□両属体質
1ページ/1ページ

土方はSなんだかMなんだか、よくわからない。
一度、捕らえた浪士に口を割らせようとしている彼を見たことがある。俺は塀の上に座って。土方は俺に気づいていたのかもしれない。そこにいても追い出されなかった。
いわゆる拷問、とかいうもので、逆さまに吊られた男に水がかけられているところだった。足やら手やらが(目を背けたくなるほどに)何やらえげつないことになっていたが、男は口を割らないようだった。若いのに、大したやつだ。
必死に攻め立てる隊士と対照的に、土方は少し離れたところでのんびりとそれを見ていた。それこそ、ウチで夕方のニュースを見る時と全く同じ顔で。
なんだか沖田くんより恐ろしく感じた。これが真選組か。アレを俺は組み敷いているのだ。よく殺されずに済んでるな、俺。

「…副長」
「あぁ」

土方は昼寝から起きた時のような返事をして、男に近づいた。

「いい根性してんな、お前」

おいおいお前、そいつに向かってなんて顔してんだよ。
土方はふわりと笑って男の頬を撫でた。浮気だ浮気。どうにかして俺の殺気が伝わらないだろうか。

「どうする、指折るか?足でも切る?どうしたら話してくれる」

優しい声からして相当機嫌がいいらしい。あいつ、本当は加虐趣味があるんじゃねえの。Sとかいうのじゃなくて、もっと酷いシャレにならないやつ。
男は話すつもりはないようだった。

「ほお、気に入った。…なら、ちょっと口開けてみな」

足元にはおそらくそれで殴ったのだろう、酒の瓶が転がっていた。俺が、うええっと口元をおおったのは土方はそれを地面に叩きつけて割り、その破片を口に入れ始めたからだ。そりゃ痛いでしょう副長さん。俺は一生浮気しないことを誓った。

「てめえは一生黙ってろ」

最後に、血まみれの男の口にちゅっとキスを一つして、土方は男を解放した。悶絶する男は這いずり回って土方から逃げる。

「ほら、おウチに帰りな」

薄く笑う土方が足先で男を突つく。這って逃げる男を眺めながら、総悟、とつぶやいた。

「…なーんか、気色悪ィ趣味してやすねェ。それも旦那が見てる前でとか」

屋敷から出てきた沖田くんが手を振ってきた。

「向こうの隠れ場がわかったら始末しとけ」
「あれをつけるんですかィ?アンタがやりゃァいいのに」
「あっちの相手もしなきゃなんねえし」

俺はそこではじめて土方と目が合った。口から誰かさんの血を流して妖艶に笑う鬼みたいなやつと。

「…オイ、ありゃ浮気だぞ土方」
「仕事だ」
「えらく仕事熱心だな」
「お前とは違ってな」
「だからってキスはいただけねえなあ」

塀からおりて、沖田くんとすれ違い土方に近づいていく。男の血だと思っていたそれは、土方のものだった。ガラスの破片で唇を切ったのだろう。俺のモンを勝手に傷つけてくれるなよ。

「…消毒してやる。けど優しくしねえから」

冷たく放った俺の言葉に土方が欲情したのがわかった。全くこいつは、どういう趣味をしているんだか。それに興奮する俺も、相当だけれども。







ある本のパロディもどきでした。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ