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□海か山か
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客観的に見て坂田銀時がかっこいいかどうか、まあ天パを除けばかっこいいのかもしれない。よく見れば顔はそれなりに整っているし(目は死んでるけど)、喧嘩も強いし、器用だし──というのは特に恋人の偏見というわけでもないだろう。世間一般に見て、彼はそれなりの人だ。
なのに俺があんまりそのかっこよさを理解できないのは、たぶんマイナス部分が大きすぎるからだと思う。所構わず触ってくるところだとか、趣味がちょっと変態じみているところだとか。

「だからさ、やっぱ俺は海派なんだよ」

デートの定番は海か山か。そんな永遠のテーマを何やら真剣に話している銀時。うーん、これが恋人か。

「山は登るのがまず疲れるしなあ、恋人ってより友達同志って感じが…って、聞いてる?まあいいや、そんでさ、海の方は…」

俺はきっと何も聞いてなさそうな顔をしているのに、熱心に見つめてくる真面目な顔。意外に二重。眉も整っている。低い声。
マイナス面が強い銀時だが、なぜか俺は、次に彼が海の家の話をしだしたその瞬間に、不意にかっこよさを感じてしまった。理由はわからない。けれど、どういうわけか、ああこの人が好きだなあ、なんてぼんやり思ってしまった。俺も末期だ。最悪だ。

「で、土方はどう思う?どっちに行きたい?」

は、デートの話?どっちでもいいや、そんなの。てかいかねえし。

「まあどっちでもバイクで──」

身を乗り出してちゅーしてやったら、面白いくらいに固まった。調子に乗って鼻先も舐めてみる。ぼんっと音がするほど赤くなった彼は、そのままボタボタと鼻血を出した。

「おまッ…俺を殺す気かっ…!」

彼氏としてはあまりにも情けない反応。まあ、それくらいの方が可愛げがあっていいんじゃねえの。

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