☆企画小説☆

□叶わない願い
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今日は俺の誕生日。


ソロコンサートでファンの人たちと一緒に過ごすバースデー。


ハッピーバースデーの曲。


心に染みた…


嬉しくて堪らないはずなのに、俺の頭に過るのは、叶うはずのない相手からの言葉。


もう会えないってわかってるはずなのに、会いたいって思ってしまう。


心のどこかで求めてしまう。


どうして俺はまだ忘れられないんだろう…


楽屋に戻り、携帯を手に取ると、大好きなユチョンとジュンスからのお祝いのメッセージが届いてた。


“ジェジュン、お誕生日おめでとう。時間ができたら飲みに行こう。おやすみ“


“ヒョン、お誕生日おめでとう。コンサート楽しかった? 今年も僕たちはずっと一緒だよ。愛してる”


二人からのメッセージを見て、思わず頬が緩む。


今の俺には、大切な居場所がある。


二人の笑顔に挟まれて、大好きな歌を歌えて、こうして会いに来てくれるファンの人たちがいる。


それなのに…


ートゥルル、トゥルル、トゥルルー


手に持っている携帯の着信が鳴った。


誰から掛かってきたのかを確認せず、電話に出る。


『はい』


『あっ、俺…』


『えっ…、ユ…ノ?』


聞き間違えるわけがない。


電話の向こうから聞こえてきたのは、愛しい人の声だった。


『ジェジュン…元気か?』


『うん…元気だよ。ユノは?』


『ああ…変わらないよ』


『そう…』


続かない会話…


それなのに、この空気がとても心地よく感じていた。


久しぶりに聞いた声…


あの頃と変わってない…


『誕生日おめでとう』


『ん、ありがとう』


『それだけ伝えたかったんだ』


『うん…』


叶うはずないと思っていた。


ユノからのハッピーバースデー。


やっぱり俺は、今でもずっと好きなんだ。


忘れられるわけないんだ。


あんなに愛した人だから…。


『ジェジュン…俺は今でも…』


『ユノ、電話ありがとう。嬉しかったよ』


ユノの言葉を遮るように、俺はお礼を言った。


最後まで聞いてしまったら、後に戻れなくなる。


もっと、もっと求めてしまうから…。


俺の願いは叶ったから、もう十分だよ。


『ジェジュン…』


『ユノ…またね』


それだけ告げると、俺は自分から電話を切った。


目の前の鏡に映る自分の顔を見る…


『ははっ、俺…泣いてんじゃん…』


頬に流れる涙を手で拭う。


何度拭っても、溢れてくる涙…


会いたい…



*************



もうすぐ日付が変わる。


打ち上げを早々に切り上げて、俺は自宅へと帰ってきた。


誕生日が終わる瞬間は、一人でいたかった。


誰ともいたくなかった。


泣き顔だけは見せたくないから…。


ーピンポーンー


インターフォンが鳴った。


重たい体を起こし、玄関へと向かう。


そっと扉を開けると…、


『な…んで?』


そこには、急いできたのがわかるくらい息を切らせているユノがいた。


『どうしても会いたくて…。声…聞いたら止まんなくなって…気づいたらここにいた』


『でも…』


『忘れられるわけないだろ…ずっと一緒だったんだから…』


『それは…』


俺も…っていう前に、勢いよく引き寄せられ、ユノの腕の中に抱き締められた。


この匂い…


俺の大好きな匂い…


ユノの胸に顔を埋めながら、目を閉じた。


『誕生日おめでとう』


『それ、さっきも聞いた…』


『そうか…。じゃあ、愛してる…』


『うん…俺も…』


ユノの背中に腕を回して、力いっぱい抱き締めた。


この腕の中に愛しい人がいる。


それだけで幸せ。


会いに来てくれてありがとう。


今度は俺が会いに行くから…。


だから、もう会えないなんて思わない。


会いたくなったら会いに行くよ。


ユノが会いに来てくれたように…。












END.

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