小説
□ラビリンス
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ハジマリ
その時は確か彼氏はいなかった。
「なんか食いたい。なんか作って。」
そんな我が儘な一本の電話がきっかけだった。
電車を乗り継いでヤツの最寄りの駅まで行く。
一人暮らしの男っていうのは、余程マメな人でない限り健康な食生活とは程遠いだろう。
ヤツも例外ではないらしく、久しぶりにお袋の味が恋しくなったのか、何で私なのかは些か疑問だが電話を架けてきたわけだ。
何を作ってやればいいんだろ…
そんなことを考えていると目的地に到着した。
改札を出たところで待ち合わせ。
久しぶりに会うものの、さほど感動もなく再会。
…高校からの友人なんてそんなもんだ。