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〜紅の囁き〜(蓉子) ――笹岡陽向。 彼女の存在は薔薇の館へ来る前から知っていた。 祥子を妹にする前、何度か見かけたことがあった。 正確には、祥子を目で追っていたら視界に入って来ただけだけれど……。 彼女と一緒にいる祥子は、いつもの怪獣の様な厳しい顔をしていなかったのだ。 楽しげに笑いあう、その姿に私は見惚れた。 こんなに可愛い顔をするのかと。 それと同時に彼女に嫉妬している自分がいた。 なぜ、祥子の笑いかける相手が私ではないのかと。 あまりにも身勝手なその思いに、私は情けなくて自嘲した。 「このままでは、いけないわね」 私は「らしくない」と笑い、祥子へと話しかける決意をしたのだ。 |