黒犬と白猫

□〜星空夜想曲〜
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初夏の夜――。


辺りは静寂に包まれ、地上を照らす白い月はもう随分と高い。


皆が寝静まった頃、ファイは一人なかなか寝付けずにいた。

昼間、幸せそうに昼寝しているサクラやモコナにつられて一緒になって眠ってしまったのがいけなかったのだろう。

外の空気でも吸おうかとのそのそとベッドから起き上がり、なるべく音をたてず静かに外へ出た。

少しひんやりとした空気を胸一杯に吸い込めば、さっきまで寝付けずにイライラしていた気分もすっきりとした。

はじめは少しの間空を眺めたらすぐ部屋に戻る予定だったのだが、夜の雰囲気のせいだろうか、気づけば月明かりの下歩きだしていた。

どこへ向かうでもなくただただ気の向くままに歩き続け、静かな河原へと辿り着いた。

水面は月光が反射してキラキラと輝き、見上げた空には数えきれない程の星達が煌めいている。

この場所へは何度か足を運んだことが有るはずなのに、あまりにも幻想的でファイを不思議な気分にさせた。

よいしょっと草の上に仰向けに寝転がれなれば、目の前には息を呑むほどの星空が広がっている。

黒様にも見せてあげたいな〜と思いながら、ふと視線を横に移すと…


「黒りん!?」


驚くのも当然、なんと黒鋼が隣で自分と同じように寝転がっていたのだ。


「おぅ。」

「い、いつの間に!?」

ファイは慌てて体を起こす。


「…物音がしたんで外へ出てみたら丁度お前が歩いてくのが見えたから、ついてきた。」

まったく、この男にはいつも驚かされてばかりだ。


「さすが忍者さんだねー。」

ファイは思わずぱちぱちと拍手を贈る。


「ったく、こんな遅くにほっつき歩いて何かあったらどうするつもりだったんだぁ??」

黒鋼の眉間に皺がよる。

「えへへー大丈夫だよお父さーん。」

「Σだッ誰がお父さんだ!!」

「きゃ〜お父さんが怒ったぁ〜♪」

「てめぇこらッ!ざけんな!」




ほら、君はそうやっていつも、怒りながらもちゃんとオレのことを心配してくれてるんだ。

そう思うと嬉しくって、自然と頬がゆるむ。


「黒様〜。」

「ぁあ?」

「心配してくれてありがと♪」

「べ、別にそんなんじゃねぇ//」

黒鋼はぷいっとそっぽを向く。




クスッ…本当に素直じゃないんだから…。ま、そんなところが黒様らしいんだけどね。


ファイはへにゃ〜と笑うと膝を抱えるようにして座った。

昼間は夏とほとんど変わらないほど暑かったのだが、夜になると一転、昼間の暑さはどこへやら。
ぐんと気温が下がり肌寒くさえ感じる。

Tシャツを着ているだけのファイは、何か羽織る物を持って来れば良かったなーと、冷えてきた自分の体をぎゅっと抱きしめた。



と、ふわりと肩に何か重みを感じた。

「??」

「んな薄着でいると風邪ひくぞそれでも羽織っとけ。」

寒さに身を縮こませるファイを見兼ねた黒鋼が自分の上着をファイにそっとかけてやったのだ。


肩から伝わってくる君のぬくもりに…君の優しさに…胸の奥がとてもあたたかくなるのを感じた。


「ありがと〜黒様ぁ♪」

「………///。」


ファイの甘過ぎる笑顔に、つい見とれてしまったことに気づかれまいと黒鋼は慌てて視線を反らす。


「おら、風邪引く前にさっさと帰るぞ。」

「うん♪」



自分は本当にこの笑顔に弱いなと、つくづく感じさせられる黒鋼であった。




いつまでもいつまでも、その心からの笑顔を…大切なお前を…俺はお前のそばで守り続けたい





幾千もの星が煌めく夜――。


そんな静かな夜に想うのは、 誰よりも大切な
    “君”
    “お前”のこと――。








☆〜END〜☆


→おまけ+《後書き》





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