黒犬と白猫
□紫陽花の詩
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六月――。
本日の天気――雨。
「むぅ〜〜」
雨の伝う窓を見つめるファイの頬がぷっくりと膨らむ。
雨が降り始めてから今日で一週間。
ザァザァと止むことの無い雨音にさすがのファイも気が滅入ってしまう。
「ん〜、いつになったら雨やむのー?」
隣でマガニャンを読んでいる黒鋼に答えを求めてみるが、んなこと知るか と軽く流された。
「いつやむのー?今日?」
「………。」
「明日?」
「………。」
「明後日?」
「………。」
「ねぇ黒るんってば〜〜。」
「―ッ!!!しつけぇ!雨にでも聞け!!」
「雨さーん。いつやみますか〜?」
「Σ答えるわけねぇだろーが!!」
いつにも増して素早いツッコミが入る。
「だって黒たんが〜〜。」
「本気にすんじゃねぇよ!!」
悪怯れもせずにへにゃりと笑うファイに呆れた黒鋼は大きな溜め息をついた。
「………せっかくの日曜日なのに…。」
しばらくの静寂の後にファイがぽつりと呟いた。
「………。」
黒鋼はぎゅっとクッションを抱きしめるファイを横目でちらりと見ると、無言で立ち上がりマガニャンを閉じた。
「黒ぽん?」
「……行くぞ。」
「え?」
突然の発言に首を傾げるファイ。
「い、行くってどこに?」
「外に決まってんだろぉが。」
「えッ…でも外…雨降ってるよ?」
「傘があんだろぉが。ごちゃごちゃ言ってねぇでさっさと準備しろ。」
そう言うと黒鋼はさっさと部屋を出ていってしまった。
残されたファイはと言うと、きょとんとしていたがすぐさま状況を理解してパっと目を輝かせた。
こうしてはいられない。抱えていたクッションを放り投げると玄関へ猛ダッシュする。
そこには既に赤と青の二本の傘を持って準備万端な黒鋼の姿があった。
「おせぇーぞ。ほら、さっさと行くぞ。」
差し出された青い傘をありがとう♪と受け取ると素早く靴を履いて黒鋼に続いて外へ出る。