黒犬と白猫

□続・紫陽花の詩
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へくしゅんッ!!

「だから言わんこっちゃねぇ」

黒鋼は大きなため息をついた。
足下には布団にくるまってぐったりとしている恋人の姿。
鼻をずびずびさせながら熱に耐え、時折うーんと唸るファイはいつになく弱々しく見える。

「おい、大丈夫か?」

「うーん…ダメかもー。」

「ったく、看病してやるって言ってた奴が看病されてどうすんだよ。」

黒鋼はファイの額ににのっかった濡れタオルを外し、かわりに自分の手を押しあてる。

「…まだ熱あるみてぇだな。」

額から手を離すと汗で少ししっとりした金色の髪を撫でてやる。
するとファイが嬉しそうに もっとなでて〜 なんて言うものだから、更に2、3度同じように撫でてやった。

「おい。」

「な〜に?黒様?」

「服脱げ。」

「…………え?」

「さっさと服脱げ。」

「えッ…ええ〜!?いきなりどうしたの〜?も、もしかして黒様ッ…オレが弱って抵抗できないのをいいことに、エッ…エッチなことするつもり〜?」

「Σしねぇよ!!」

黒鋼はファイのくるまっている布団を無理やりひっぺがすと、何をされるのかとビクビクしているファイの服の中へ手を滑らせた。

「ゎわッ!つ冷たいよ黒たん」

「ったく、汗かいたままで気持ち悪くねぇのか?体拭いてやるから服脱いでおけ。」

そう言って黒鋼は洗面所の方へどかどかと歩いて行ってしまった。

残されたファイはそういうことかと納得すると、言われた通り汗で湿った服を脱ぎ始めた。
汗でぺたりと体に張り付く服をなんとか脱ぎ終えると、先ほどひっぺがされた布団を引っ付かんで再びすっぽりとくるまる。
と、廊下からどかどかと足音がして洗面器とタオルを持った黒鋼が戻って来た。

「脱いだか?」


「ちゃんと脱いだよ〜。ほら」

そう言って布団をめくって見せる。

「ああ、そのまま横になってろ。」

「は〜い。」
こてんと横になるとすぐに背中に何かが触れた。

「Σひゃあッ」

それは固く絞られたタオルだったのだが、ひやっとした感じにファイはつい変な声を出してしまった。

「ちょッ…//い、いきなり触られたらびっくりしちゃうよ〜。」

ファイはうつ伏せの状態のまま首だけ黒鋼の方へ向ける。

「ぁあ?だから拭くって言っただろぉが。さっさと前向け、前。」
そう言うと黒鋼は再びファイの背中をタオルで拭き始める。
背中を拭き終えると、次は首筋から肩それから腕へと丁寧に拭いていく。
くすぐったいのか時折ファイの体がビクっと反応する。

そういやぁこいつ、くすぐったいのが苦手とか言ってたな。 なんて考えていると、くしゅん!くしゅん!とファイのくしゃみが聞こえてきた。

「あ〜ぁ、あと1回出ればトリプル成功だったのに〜。」

「なぁに呑気なこと言ってんだ。次は前拭くぞ、起き上がれるか?」

「うん、大丈夫だよ。ちょっとだるいけど。」

ファイはのそのそと起き上がるが、ふらふらして危なっかしいので黒鋼はその細い体を支えてやる。
前を拭くといっても後ろから抱え込むような体勢のため両脇から手を伸ばして拭いていく。

「ふぁ//くすぐったいよぉ〜」

「そんぐらい我慢しろ!」

「だってー黒様が変なとこ触るんだもん。」

「うるせぇ、触ってねぇ!」

「ひぁあッ…//」

「…………。」

「んッ…ぁあ…ん//」

「…………。」

「はぅぁッ…「変な声を出すなぁ!!!」


黒鋼の声が盛大に響いた。


そして次の瞬間、黒鋼の中の何かがプツンと切れた。



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