CP小説

□Empty of the whole sky
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「左近?」

「!?
・・・・・多由也か。」

「どうした?
主役のくせに盛り下がりやがって。」

「あぁ・・・いや・・・」

確かに、今日はオレ・・・と兄貴が
誕生日で
一応主役だ。

けどオレはそのパーティーに参加せず
一人ベランダに出て
少しキラキラした、真っ黒い空を見てた。

「・・・・・・。」

多由也はただ黙って
オレと同じように
空を見上げ始めた。

肩から、赤い髪が滑り落ちる。

それを横目に見ながら
星の色はいくつあるものか・・・とか
どうでもいい事を考えた。

横目に、多由也がこっちを見たのが
解った。

「・・・・・・どうした?」

「どうしかしてんのは
テメェだろが、ボケ。」

「いやっ・・・そうか?」

「・・・・・・随分哀しい顔してんだな、お前。」

「・・・・・・!」

そう・・・見えた?
哀しい?
何が哀しいって?
「楽しい?」って聞かれたら
即答できる自信は無ぇけど
「哀しい」って感情も
特には意識してなかった。

「・・・・・・それがテメェの
普段の顔だったか?」

嫌みのようにニヤリと笑い
多由也は続けた。

「普段のテメェはもっと
腑抜けた、阿呆な顔だったと
思うけど?」

「ふぬけ・・・っ」

おう、今「哀しい」と思ったわ
畜生(泣

「・・・・・・何かあったか・・・は
聞かねぇーけど」

「・・・・・・。」

「おま「多由也。」

「ん?」

多由也の声を遮り
オレは自分の声を引っ張り出した。

何が言いたいのか、とか
まとまってねぇけど・・・

「この空に向って
力の限り叫んだとしたら
どうなると思う?」

「は?」

多由也は一瞬キョトンとし
少し眉間に皺を寄せ
再び空を眺め始めた。
眉間に皺を寄せながら
空を見上げ。そのまま黙ってしまった。

・・・・・・真剣に考えさせて
しまったようだ・・・。

「いや、あー・・・多由「・・・・・・
その声の
昇れる限りの高さまで
空に向って昇ったら
そのまま四方八方飛び散って
誰かの耳に届く・・・
とか?」

「・・・・・・・。」

聞こえる・・・かな
誰かの耳へ
多由也の叫びは・・・

オレは?

「・・・・・・テメェが今
叫んだとしたら
相当に哀しく響きそうだな。」

「・・・・・・そうか?」

「テメェが泣きそうだと
皆が心配する。」

多由也はポツリと言い
親指で、さっきまで騒いでた
奴らの方を指した。

全員さっきまで
ガヤガヤしてたとは思えないほど
静かに、オレらの方を見てた。

情けなく眉毛を下げて。

「・・・・・・。」

「解ったら早く本調子なって
空でなくウチらの前で
叫びやがれ。」

「・・・・・・おう。」

空が、オレの叫びを吸収したのは
誰にも聞かせないようにした
嫌がらせじゃない。

誰も哀しくならないように
オレの叫びを、空だけが
ひっそり聞いてくれて
そのまま抱きしめてくれたって事か?

オレが今、晴れた気持ちで
叫んだとしたら
オレの声は皆に届くだろうか?

「・・・・・・やんなきゃ解んねぇーよ。」



「おい、左近、こっち来い。
待ってんだぞ。」

兄貴の乱暴な声。
オレはニヤリと笑い
もう一度空を見上げ
軽く叫んで見せた。

「今行く。」

振り返り、皆のもとへ
オレが笑ったら
情けない眉毛が
ピン、と上に持ち上がった。

「馬鹿みてぇだな。」

一つ呟き、オレは笑った。
多由也も笑った。


空が寂しくは
見えなくなった。



遠く、彼方で
朝焼けが覗き始める頃

end
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