ゴミ箱

□愛してるって100回言って
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「麗ー、お前ん家行っていい?」

「いいよー」


・・・俺には関係ないけどさっ














「おーおー妬いとる妬いとる」

「・・・うっさいよ」


からかう声をあげた葵。
こういうとき、うざいなこいつ。

俺の目線の先には玲汰と麗。
・・・"元"恋人だって。
いつ付き合ってたか、なんで別れたか
全く知らないけどさ。教えてくれないし。

・・・訊いてもいないけど。


「俺の服、お前ん家にある?」

「めっちゃあるよ。そろそろ捨てるか」

「捨てんなっ」


別れても楽しそうなあの二人を
内心穏やかじゃなく見てる理由を
まだまだ俺は認めたくない。

だって、あの二人は仲良しだから。
よりを戻すきっかけを探ってるように
俺には見えてしまうから。

好きだなんて、とても言えない。


「輪の中、入ってくればええやん」

「ほっとけ・・・」


俺だってそうしたいよ。
邪魔しに行きたいよ。

より戻せば?なんて言わないし
幸せになれよ、なんて思わない。

そんなに格好良い人間じゃないし
優しい男でもない俺は、玲汰に
こっち来やがれ、って思ってる。

別に平気だなんて顔できないよ。


「流鬼ー?」

「!」

「なーに険しい顔してんだよ」


ぶちゅっと俺の頬を潰して
けたけた笑ってる玲汰。

麗はすでに携帯をいじって
こっち向いてもいない。

やっと俺のとこに来た。
そしたらもう向こうには
行かせたくない。

こんなことばかり考えてんの
お前は知ってんの?


「流鬼が難しい顔してるとそわそわする」

「な、んだよそれー」

「なんで噛んだよ」


だったら俺のことだけ気にしてろよ。
俺のこと幸せそうに笑わせてくれよ。

麗のとこになんてさぁ、


「れいちゃーん、ちょっといいー?」

「おう」

「・・・・・・」


玲汰に今までいた彼女は
なんとなく覚えてる、けど
こんな気持ちになったことない。

玲汰はノーマルだと思ってたから
こんなに焦燥ばかり覚えるのか。

そうじゃない。

ノーマルだけど麗ならいい、と思って
付き合ったんだったら俺には
そこに入る余地なんて残されてなくて。

俺なんか見てもらえるわけもなくて。
そんな女々しいことを考えて
動けない俺が一番きもくて嫌で。


「惚れさせるのが流鬼やろ?」

「・・・・・・」


今までの人生経験がまったく通じないから
どうしたらいいのか解らないんだよ。

好きになってもらうには何をしたらいい?
友達じゃなくなるには、どうしたら。


「麗は特別?」

「さぁ」

「ずるいじゃん、そんなの」


だって出会う前になんて出会えない。
麗より前になんて戻れないじゃん。

そんなのずるいじゃん。
不公平じゃん。

出会ったもん勝ちじゃん。


「なら戦え」


うじうじしとんな、と言って
葵が席を立って、離れた。

煙草に火をつけて
ぼんやりと玲汰を見る。
なぁ、俺のことも入れてくれる?

その視界の中に、俺のことも。


「玲汰」

「なに?」

「うわっ・・」

「え、なに」


呼んでおいて、と玲汰が笑った。

俺、呼んだっけ?
勝手に口から零れてたのか。
そりゃ末期症状だな。

おーい、と笑いながら
俺の隣に座った玲汰。


「麗ん家、行くの?」

「あー、気が向いたら」

「なにそれ」


行かないで、なんて可愛いことを
俺が言えるわけもないから
煙草の煙をゆっくりと吐き出した。

頭の中はいつも最悪のケースを想定して
テンション下がって馬鹿らしくなって
溜息をついて、終わるんだ。

麗の家に行って、それだけで終わんの?
何事も無いなんて言ってくれんの?

欠伸しながら俺の煙草いじってるお前の
その隣で、こんなことばかり考えてる
俺のことにちょっとは気付けよ。


「」

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