ゴミ箱

□Light in the
1ページ/1ページ



ここにあるものを大事に出来たかな。


見失って、ないかな。













「擦れ違うのって簡単だよ」


俺の言葉に玲汰が頷いた。

心を通わせるには、程遠くて
近づくだけでも時間は足りなくて

離れてしまうのは、一瞬なんだ。


「俺がいつか、何処かで、
発する言葉で全部終わる」


そんなことも、ある。

何気ない会話の中で、何かが
誰かを傷つけてしまった瞬間に
なにもかも崩れ去ることも、ある。

握った砂と同じくらいの、刹那で。


「傷ついてたよな」


玲汰の髪を撫でる。
じっと俺を見つめている目は
穏やかで、優しくて・・・

いっそこのまま吸い込まれたら、なんて。


「・・・傷ついたけど」

「うん」

「一人じゃなかったから」


玲汰が呟いた。

刺さるほどの柔らかさで
俺の指先に触れながら。

その笑顔は、簡単に作れたものじゃなくて
俺と出会ったせいで知ってしまった痛みも
越えた今だから、浮かべることが出来たって

玲汰は、言ってくれるんだろ?

だから俺も笑う。
同じだけ、傍にいた俺だから
受かべることのできる、笑顔で。


「一緒に傷ついてたから、誰かが」

「ふふ。誰かが、ね」


目を細めた玲汰は、俺の指を離さない。
だから俺も握り返して、額を寄せた。

目を閉じて、鼻先を寄せる玲汰に
軽く唇を触れ合わせながら・・
幸せだな、なんて軽い言葉で。

たった4文字にしか出来なくても
その4文字を言えるために泣いたんだ。

4文字のために、痛かった。


「流鬼は馬鹿だからな」

「・・知ってるよ」


へらっと笑ってる玲汰が
俺に体重を乗せて凭れる。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ