短編集
□露×日
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ねぇ、どうして?
返してよ、僕の…たった一つの…。
―――…
白を基調とした長い廊下を全力で駆け抜ける。
口が渇いて上手く呼吸が出来ないながらもロシアは走り続けた。
―――バタンッ。
荒々しくドアを開けた為か大きな音が響くが、それを咎める者はその場にはいなかった。
ただあるのは、広い部屋に不釣り合いなたった一つのベッド。
ピッ、ピッ…と日本が生きていることを告げる機器。
そして、そのベッドに身を横たえる傷付いた日本だけだった。
「にほん、君…」
喉がカラカラに渇いて上手く名前が紡げない。
身体の震えが止まらない。
ベッドに近寄れば近寄る程に分かる日本の状態はそれは酷いものだった。
「ねぇ、どうして日本君はこんなにまでならなくちゃいけなかったのかな?」
ねぇ、アメリカ君…?
ロシアが振り返ればいつの間にかドアの近くにアメリカが立ち、その冷たく問い掛ける声にビクリと肩を震わせた。
「上司は、俺にも知らせなかったんだ。ただ日本を治す薬が完成したとだけしか言わなくて…」
―――ジャキ…。
「じゃあ、君はその言葉を信じたんだね?そんな必要以下の情報しか与えられないままで」
こんなになるまで日本君を傷付けて…。
気が付くとアメリカの目の前にはロシアが居り、その眼鏡のすぐ上−ちょうど額の中心−に銃口を突き付けながら淡々と呟いた。
「僕は嬉しかったんだよ、アメリカ君。その薬のお陰で日本君が元に戻るんだって信じてたんだ。だけど、駄目だね。君みたいな自称ヒーローを信じちゃいけなかったんだ。ねぇ…」
死んでみる…?
ニタリと不気味な、そしてどこか無邪気な笑みを浮かべてロシアは手に持っている銃の引き金を迷いなく引く。
―――パァンッ…。
どこか虚ろな、しかし乾いた音がその場に木霊した。
広がる血溜まりの中に一人だけ、二本の足で立っている者−そこにはロシアしかいなかった−は振り返る。
ロシアは頬に赤い液体を付けながら、それでも穏やかに微笑んだ。
彼の視線の先には、日本。
「ねぇ、日本君。僕、偉いでしょ?」
君を苛めた奴を殺したよ…?
そう言ったロシアの声はただ誉められることを待ち望む子供のようだった。
返してよ、僕のたからもの。
返してよ、僕の大切な人。
〜返してよ。僕のたからもの〜
(彼がこんなに傷付いたのは、君達のせいだ…)
‡END‡
ふぅ、書きやすかったっ!!
やはりダークは書きやすいよっ!!(オイ)
そして初・原爆話っ!!
なのにアメリカを死なせちゃうし、都合良くロシアは日本が好きで出張るし…。
なんか色々矛盾?
イヴァンが大好きなのです…orz
アメリカ好きの皆さん、すみません(土下座)
Title:名無し猫のアトリエ
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