短編集

□露×日
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それは、あまりに曖昧な関係だった。
お互いがお互いを脅威としつつも、心のどこかではお互いを求めていた。
仲間が近くにいても埋められない喪失感、いつの間にか落としてしまっていた幾つかの感情。
笑って、嗤って、それだけでは駄目な気がするのに、そのままにしてしまっていた。
必要ないと自分に言い聞かせて、やっと出た涙でさえも口元を引き上げて、消してしまう。



(駄目、それをしては駄目)



分かっている、それが全てを殺す要因になるのだと。
けれど、そうしなければ、自分の中の何かが壊れてしまう気がした。
抗って、足掻いていたその先で、自分は相手に巡り会った。



(会いたかった、逢いたかった。心のどこかで求めていた人)



けれど、自分ははたと気付く。
ここは、自身が二本の足で立っているこの場所は、戦場。
薫る硝煙、上がる絶叫、煌めく火花、流れる血の赤。
殺し、殺され、眠り、眠らされ、全てを無にする場。
そこで出逢ってしまった二人の運命はなんて残酷なのだろうか。



浮かんでしまう笑みで相手を迎えながら、心の片隅で涙を流した。



〜お互いはであり、そして最もしい人〜



‡END‡



露と日は似た者同士だと思う。



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