短編集

□その他×日本
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愛することも

愛されることも

知らない君は



愛しい壊れたお人形だね



―――…



一人地面に横たわる人物を、二つの黒曜石が静かに見詰める。
それは横たわる中国にとって何時間にも感じられたが、真実はほんの数分。
その居心地の悪い静けさに中国が舌打ちしたくなったが、相手が動く気配があったので無理矢理それを中へと押し込んだ。



「怒って、恨んで、怨んで下さって構いません。私はそれに値することを貴方にしました。憎んで、私を弟としたことを悔やんでも構いません。私は兄の貴方に刃を向けました」



そう言って、近付いて来た彼−日本は中国の顔を覗き込みながら自らを嘲るように顔を歪めた。
それは悲しい、自身を封じ込める為の盾。
しかし、中国は土や血で汚れた顔に笑みを浮かべながら首を振った。



「怒りも恨みも怨みも、憎みも悔やみもしないアル。日本は我の大切な弟、大切な存在。…何故、そんなにして自分を卑下するアルか?」



何故、愛されることを拒む?



中国の日本に対する慈愛に満ちた瞳の中に存在する疑問。
その穏やかな光を見ていられず、日本は思わず顔を背けた。
その顔は僅かな悲しみと大きな恐怖に染まっている。
その様子に、中国は確信を覚えたのだ。



「日本は、愛されるのが怖いアルね」



静かに、諭すように紡がれた言葉に日本の肩が大きく跳ねる。
それは、肯定の証。



「長い間、殻に閉じこもっていたお前は愛することも分からず、愛されることに恐怖してるアル。だから我の言葉も信じないアルね」


「違う、違う違う違うっ!!『愛』の存在が必要ないだけっ!!私にはそんな感情はあってはならないっ!!」



首を大きく振りながら中国の言葉を拒絶するように普段の口調も捨て、叫ぶ日本にフッと小さくだが笑みが零れる。
あぁ、日本の上層部は日本をここまで“人形”にしたか…。
国は上層部には抗えない。
だが、国自体にも表情があり、感情がある。
ほら、イギリスもアメリカもロシアもイタリアも、あのドイツも日本に対しては優しい笑みを浮かべていたのに。
それは感情があるから。
だから皆が皆、泣いたり笑ったりが出来るのだろう。
しかし、目の前にいる日本はどうだろう?
浮かべる笑みは“仮面”。
流す涙は“偽り”。
光の無い瞳はただの“宝石”。



そんな日本は…



「まるで人形アルな」



日本の顔も見ずにポツリと呟かれた言葉は、このような状況であるにも関わらず憎らしい程に青い空に溶けて行った。



〜DOLL〜



(まるで人形のような君は、“愛”さえも拒絶するんだね)



‡END‡



フランスが出なかったのは何故だろう?(聞くな)
フランシス兄さんは…、まぁフランスだからっ!!
トリコロールに虜な方だからっ!!←



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