novel
□迂路
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「よお、恭弥!」
「……またあなたなの」
応接室のドアを開けたまま恭弥はうんざりとした表情で出迎えた
「恭弥に会いたくてさ」
「……入って」
軽く舌打ちが聞こえたような気がしたが、恭弥は俺を応接室に招き入れた
ソファに座ると、恭弥はちらり、と視線だけこちらに寄越して、机上の書類に手を伸ばす
「ねえ」
「んー、何?」
「それはこっちの台詞。今日は修業じゃないだろ」
まあ、恭弥の言う通りだけど
相変わらず、その勘だけは鋭いらしい
隠し通せるものでもないので、俺はソファから立ち上がり、恭弥の隣に腰を下ろした
「ちょ…」
「ごめんな、恭弥」
その白い頬に軽く触れて、俺は隠し持っていたハンカチを強引に恭弥の口元に押し付けた
「ん、ぐっ!んんー!!」
当然、恭弥は抵抗したが、その勢いで薬まで吸い込んでしまい、俺の腕の中で意識を失った
「悪ぃ……けど、これしか方法がねーんだ」