novel

□迂路
2ページ/8ページ








「よお、恭弥!」

「……またあなたなの」



応接室のドアを開けたまま恭弥はうんざりとした表情で出迎えた



「恭弥に会いたくてさ」

「……入って」



軽く舌打ちが聞こえたような気がしたが、恭弥は俺を応接室に招き入れた


ソファに座ると、恭弥はちらり、と視線だけこちらに寄越して、机上の書類に手を伸ばす



「ねえ」

「んー、何?」

「それはこっちの台詞。今日は修業じゃないだろ」



まあ、恭弥の言う通りだけど



相変わらず、その勘だけは鋭いらしい



隠し通せるものでもないので、俺はソファから立ち上がり、恭弥の隣に腰を下ろした



「ちょ…」

「ごめんな、恭弥」



その白い頬に軽く触れて、俺は隠し持っていたハンカチを強引に恭弥の口元に押し付けた



「ん、ぐっ!んんー!!」



当然、恭弥は抵抗したが、その勢いで薬まで吸い込んでしまい、俺の腕の中で意識を失った



「悪ぃ……けど、これしか方法がねーんだ」







次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ