novel
□哀空
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閉ざされたカーテンから差し込む、淡い太陽の光
その色をぼんやりと眺めながら、俺は痛む脇腹を何度か擦った
「……痛むの?」
「ああ、少しな…」
ベッドの隣に座る恭弥が不安げに、俺を気遣う
心配させないように、といつもの笑顔を見せたつもりだった、が
「……無理してる」
余計に恭弥の不安を煽る結果となってしまった
「悪ぃ…」
小さく謝って恭弥の頬に手を伸ばせば、彼は不安げな瞳を見せて目蓋を伏せた
「キャバッローネのボスがこの様なんて……聞いて呆れるよ」
皮肉で放たれた言葉
だけどそれが、妙に胸に突き刺さる
「死んじゃったかと…思ったんだから……」
……俺がこんな怪我を負ったのは、今から一ヵ月前
仕事を終え、これから戻るという時に事件は起きた
乾いた銃声が数発響き、同時に身体中に走る痛み
それに気付いた俺の部下がいたから良かったが、一歩間違えば俺は死んでいた
……油断していなかった、といえば嘘になる
まだ息があった奴らに背を向けた時点で、俺の死が確定する
ここは、そんな世界だ
「……綱吉だって、あなたのこと教えてくれなかったし」
「それはツナなりの優しさだろ?…有り難く受け入れろよ」
「嫌いだよ、あんな…」
俺の一報を受けた時、ツナはそれを恭弥に教えなかった
恭弥は任務中で、仕事に支障が出ては困る、というツナの配慮
……恭弥はそれが気に食わなかったらしい
実際、恭弥が俺のことを知ったのは、それから一週間後のことだった