novel

□哀空
1ページ/3ページ









閉ざされたカーテンから差し込む、淡い太陽の光


その色をぼんやりと眺めながら、俺は痛む脇腹を何度か擦った



「……痛むの?」

「ああ、少しな…」



ベッドの隣に座る恭弥が不安げに、俺を気遣う


心配させないように、といつもの笑顔を見せたつもりだった、が



「……無理してる」



余計に恭弥の不安を煽る結果となってしまった



「悪ぃ…」



小さく謝って恭弥の頬に手を伸ばせば、彼は不安げな瞳を見せて目蓋を伏せた



「キャバッローネのボスがこの様なんて……聞いて呆れるよ」



皮肉で放たれた言葉


だけどそれが、妙に胸に突き刺さる



「死んじゃったかと…思ったんだから……」



……俺がこんな怪我を負ったのは、今から一ヵ月前


仕事を終え、これから戻るという時に事件は起きた


乾いた銃声が数発響き、同時に身体中に走る痛み


それに気付いた俺の部下がいたから良かったが、一歩間違えば俺は死んでいた


……油断していなかった、といえば嘘になる


まだ息があった奴らに背を向けた時点で、俺の死が確定する


ここは、そんな世界だ



「……綱吉だって、あなたのこと教えてくれなかったし」

「それはツナなりの優しさだろ?…有り難く受け入れろよ」

「嫌いだよ、あんな…」



俺の一報を受けた時、ツナはそれを恭弥に教えなかった


恭弥は任務中で、仕事に支障が出ては困る、というツナの配慮


……恭弥はそれが気に食わなかったらしい


実際、恭弥が俺のことを知ったのは、それから一週間後のことだった







次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ