〜後藤誠二ver〜



「珍しいね。誠二がタバコ吸うなんて」

夕暮れ時の屋上で並んで立つ彼女を横目で見れば、口元のそれをジッと見ていて。

「たまに、な」

そう言われてみれば、彼女の前で吸った事はなかったかもしれない。

日頃から吸うわけではく、疲れた時や何かを考えたい時に手が伸びるだけのもの。

だからどうということではないのだが、彼女の視線は未だタバコに注がれている。

「…ねぇ」
「なんだ」
「苦くないの?」

彼女の視線がタバコから後藤の顔に向いて、首をコトリと傾けてそう聞くその姿は容姿も相まってとても可愛らしい。

「...吸ってみるか?」
「嫌よ」

だって絶対苦いでしょ。

そう言ってその顔が少し歪む。普段の彼女はどちらかといえば表情が読み取りにくいのだが、自分の前では色々な顔を見せてくれるし雰囲気も柔らかくなる。

それが同期であることの気安さからだと分かっている。ここにいるのが同じく同期である一柳であったとしても彼女は同じ顔を見せるのだろう。

それはなんだか複雑で。

出来ることなら...その表情全てを独占したいと思うのは一度や二度ではなく。けれどそれをしないのは、【欲】を見せた瞬間に彼女が自分との距離を取ることを恐れたから。

今のこの距離を、この関係を、壊すことを恐れたからだ。

公安部公安課という特殊な部署に籍を置く身である後藤にとって、彼女との何気ない時間と会話は肩の力を抜いていられる貴重な時間。

この時間を失いたくはない。

「あ、タバコ吸った後に女の子にキスしちゃダメよ?」

苦いの嫌いな子が多いんだから。

そう思い伸ばしそうになる腕を抑えているというのに、彼女はこちらを試しているのかと思うようなことを言って。

いや、彼女のことだから自分を全く男として認識していないが故のことかもしれないのだが。

どちらにしても、後藤にとっては面白くない話だ。

そう思ったら、無意識に腕は伸びていて。

すぐそこにいた彼女の腕を取って自らの腕の中に引き込んで、驚き目を見開く彼女のその顔もまた、後藤が目元を緩めるのには十分なほど愛しくて堪らない。

「...誠、二?」
「お前はどうなんだ」
「....っ..」

少しでも動けば唇が当たる距離まで顔を近付ければ、彼女は驚いて息を止め、その顔が見る見るうちに赤く染まる。

もっと、その顔を見たい。

いや、それ以外にも...自分にだけ見せて欲しい。全てを。

「苦くても逃げるなよ」

そう言って彼女の唇を塞ぐまであと...



〜キス甘〜



深く激しいキスを繰り返せば、彼女の腕が背中に回る。合間に何度も名を呼び、自らも舌を絡めてくる彼女に後藤は心を決める。

この存在を逃したはしない、と。

抱きしめる腕に力を込めて、後藤は最愛のその名を呼んだ。

「好きだ」

その思いと共に。





END


久しぶりに拍手更新。
今回は公安刑事から、後藤さんにしてみました。

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