七転抜刀
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「妖刀は、」と俺の質問に、日野さんが答え始めた。
「実際、俺もよく分からん」
「分かんないんですか。」
俺のガッカリしたような声に、日野さんは続ける。
「だが、噂では、この世界を支えてるとかいう話があるが、俺は信じてない。というか、大半が信じてない。嘘くさいしな」
「へえ…」
「妖刀ってのは、全部で12本くらいあってな、『雨桜』はその12本の中で最強だって言われてる」
「そうなんですか?」
「最凶とも言われてるしな」
「………小説だからこそ楽しめる言葉ですね。って、最凶?」
俺がそう聞き返したその時、襖が開く音がした。
見ると、そこには筒状に巻いてある地図を片手に持った神崎さんがいた。
「取ってきました」
「おう、じゃあ説明する」
神崎さんは日野さんに地図を渡すと、俺の横にすとん、と座った。
日野さんは地図を広げた。
地図に描かれてるのは、いつもの日本地図、だと思った。
違う。日本じゃない。ここはどこだ。
地図を見た瞬間、そう思った。
そこに描かれていたのは、円形のような地形の、どこかの国だった。
日本と同じように、海に囲まれているが。
「え、これって…」
俺がそう呟くと、日野さんはおかまいなしに説明し始めた。
「ここが、今俺達のいる所だ」
そう指を指したのは、円形の国の、南西あたりだった。
地図は、大体が県ごとに線で区切られているけど、これも同じように、まず、中心部分に円が描かれていた。
そこから放射状に線が五本伸びていて、合計六つの県?で形成された国だった。
………授業とかで、都道府県覚える時、楽だろうなぁ…。
いや、そんなこと考えてる場合じゃない。
ここって、本当に異世界なんだ…。実感するな。
「この中心部分…」
と、日野さんの人差し指が、地図中の中心部分を指す。
「ここに、幕府がある」
俺は黙って頷いた。
「で、この六つのすべての都市に、自警団がある」
「え、自警団って一つじゃないんですか?」
俺の質問に日野さんは頷き、続ける。
「俺達がいる場所、ここの名前は『桜月』」
「『桜月』…」
おうむ返しのように、俺は日野さんの言葉を繰り返す。
「で、幕府がある場所は、『修羅』」
これだけ覚えていればいい、と日野さんは言うと、地図をしまった。
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