七転抜刀

□12
1ページ/4ページ






「妖刀は、」と俺の質問に、日野さんが答え始めた。



「実際、俺もよく分からん」


「分かんないんですか。」



俺のガッカリしたような声に、日野さんは続ける。



「だが、噂では、この世界を支えてるとかいう話があるが、俺は信じてない。というか、大半が信じてない。嘘くさいしな」


「へえ…」


「妖刀ってのは、全部で12本くらいあってな、『雨桜』はその12本の中で最強だって言われてる」


「そうなんですか?」


「最凶とも言われてるしな」


「………小説だからこそ楽しめる言葉ですね。って、最凶?」



俺がそう聞き返したその時、襖が開く音がした。


見ると、そこには筒状に巻いてある地図を片手に持った神崎さんがいた。



「取ってきました」


「おう、じゃあ説明する」



神崎さんは日野さんに地図を渡すと、俺の横にすとん、と座った。


日野さんは地図を広げた。


地図に描かれてるのは、いつもの日本地図、だと思った。


違う。日本じゃない。ここはどこだ。


地図を見た瞬間、そう思った。



そこに描かれていたのは、円形のような地形の、どこかの国だった。


日本と同じように、海に囲まれているが。



「え、これって…」



俺がそう呟くと、日野さんはおかまいなしに説明し始めた。



「ここが、今俺達のいる所だ」



そう指を指したのは、円形の国の、南西あたりだった。


地図は、大体が県ごとに線で区切られているけど、これも同じように、まず、中心部分に円が描かれていた。


そこから放射状に線が五本伸びていて、合計六つの県?で形成された国だった。


………授業とかで、都道府県覚える時、楽だろうなぁ…。


いや、そんなこと考えてる場合じゃない。


ここって、本当に異世界なんだ…。実感するな。



「この中心部分…」


と、日野さんの人差し指が、地図中の中心部分を指す。



「ここに、幕府がある」


俺は黙って頷いた。



「で、この六つのすべての都市に、自警団がある」


「え、自警団って一つじゃないんですか?」



俺の質問に日野さんは頷き、続ける。



「俺達がいる場所、ここの名前は『桜月』」


「『桜月』…」


おうむ返しのように、俺は日野さんの言葉を繰り返す。



「で、幕府がある場所は、『修羅』」



これだけ覚えていればいい、と日野さんは言うと、地図をしまった。


.

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ