七転抜刀
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えー、前回に引き続き、とんでもないことに巻き込まれてしまった俺ですが、
いつからこうなったんだ…、俺はただ部屋で眠りこけていただけなのに…。
泣きたくなってきた…。
そう考えていた時、俺に声がかけられた。
「オイ」
声からして、雨ちゃんとやらだ。
そこでふと気付いた。
口調、乱暴すぎないか?
まさか…。
桜がもう来たのかと、俺はおそるおそる、声がした方を見た。
が、
そこには雨ちゃんが一人いるだけ。
容姿は二人とも一緒だから、見分けはつかないだろうけど、一人しかいないから多分雨ちゃんだろう。
「汝(うぬ)、聞いておるのか?」
いや、違う。
これは…。
嫌な予感しかしなくなった俺は、首を傾げつつもおそるおそる尋ねてみた。
「ええ、と、もしかして桜…さん?」
「そうだ。このクズが。この私が直々にお前の体を借りてやったというのに、礼儀の知らないガキだ。死にたいのか?」
雨ちゃん、ではなく桜は、俺に向かってマシンガンのように暴言をまき散らした。
えええええええええええ………。なんて身勝手な…。
フン、と桜は、腕を組んだ。
「まったく、あともう少しで辰巳の所有者を殺すことができたというのに、邪魔が入った」
「邪魔?」
なんの事だ。
またも首を傾げた俺を見て、桜はジロリ、と睨むと舌打ちした。
「汝であろう?儂の動きを止めたのは」
「なんの事か、分からないんだけど」
「とぼけるでない。というか、とぼけても何の意味も持たぬだろう」
「いや、だから本当に知らないって」
俺の言葉が本当だと気付いたのか、桜は『………』と黙ってしまった。
桜は何も言わないので、俺は迷惑そうな顔をして、桜に話しかけた。
「あのさ、早くここから出してくれない?そろそろ俺も孤独死しそう」
「孤独死?ハッ、儂がいるではないか」
「いや、アンタがいたら、ストレスで死にそう」
そう言い放った瞬間、桜のドロップキックが俺の腹にきまった。
俺が地面に倒れ伏せたと同時に、すたん、と桜が地面に着地した。
そして、痛みに悶えている俺を見下ろし、殺気を込めた声でこう言った。
「次、そんなナメた口きいたら内蔵を引きずり出す」
「マジで!?」
驚きのあまり、俺は痛みを忘れた桜を凝視した。
な、なんて恐ろしい……ッ。
俺が、想像して怯えていると、桜がえらそうに腰に手を当て、言った。
「まあ、ここから出してやらん事も無いな。今の汝の体は儂の意識もお前の意識もないから、昏睡状態だ」
「え、じゃあ早く出してよ」
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