【少年、村上 時雨が目を覚ませば、そこは廃デパートだった。】
「これについてどう思いますか」
「何か、面倒臭い感じがプンプンするよね」
俺が切り出した言葉を大江さんはすべてを和ませるような表情で、一瞬でぶった切った。
七転八倒 出張宣伝
こんにちは、村上 時雨といいます。
俺は、『七転抜刀』という小説の主人公をやっています。
ちなみに隣の大江さんこと、大江 蓮はヒロインです。
「嘘だよ」
俺の完璧なモノローグを笑顔で遮る大江さん。
俺は咳払いをしつつ、冒頭にあったテーマを話題にした。
「でも確かに、いきなり『廃デパートだった。』って言われても困りますよねー」
「そうだよ、しかもなんで散々ギャグです、とかいいながら冒頭からシリアスなんだよ。詐欺じゃん」
「まあ、今日はそんな誤解を解きつつも『七転抜刀』を宣伝するんですから、大江さんもシャキッとしてください」
「んじゃあ、宣伝始めてみよっか。」
「俺こと、村上 時雨は部屋で眠りこけていたんですが、もう一度目覚めてみれば、そこは人っ子一人いない廃墟でした」
「なんか、怪談話してるみたいだね。切り出し方が」
「突然のことに混乱している俺を救ったのは、真っ白な1人の女性こと、大江 蓮さん」
「いきなり天使って言われたからね。エンジェ●ビーツ
かよ(笑)」
「笑えねえよ。著作権ギリギリだよ」
「で、一通りの事情を聞いた俺は、時雨と一緒に廃墟から脱出しよーってなったんだよねー☆」
「かわいいな畜生。 で、そんな矢先、スキンヘッドのR-18な笑みを持つ男達に襲われます」
「あ、襲われるって、そういう意味じゃないよ?」
「大江さん、一回黙りましょうか」
「さ、続けて」
「で、必死にその場を切り抜けた俺達ですが、再び捕まってしまいます」
「何で襲われちゃったのかはしらないけど、敵さんは何か誤解して俺達を捕まえちゃったんだよ。とんだ人違いだよねー」
「え、そうなんですか? で、気づけば手足をロープで縛られて身動きがとれないまま、コンクリートでつくられた部屋に閉じ込められます。」
「絶体絶命、と思ったその時、」
「コンクリートの分厚い壁を、蹴り一つで粉砕できる女の子が現れました」
「この時点でファンタジーだよねー。」
「その女の子、神崎 愛羅は、女らしさの欠片もないような女で、とにかく恐ろしい人で…ッ」
「ここぞとばかりに言うね」
「まあ、こんな感じですかね」
「うん。そうだね。まあ、そんなこんなで『日野さん』とかいう謎の人物が浮かび上がって、そいつがこの連続殺人事件の犯人だった…」
「息をするように嘘をつかないでください。とにかく日野さんはいい人ですよ」
「じゃあ、そんなこんなで『七転抜刀』をよろしくねー」
七転抜刀 第一話
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