地獄に居る筈のキミへ
□二章
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俺はキレ兄と手を繋いで歩いていた。
キレ兄は無言で話しかけても何も言わない。
でも凄く幸せだった。
キル兄はミリツィアをまくからとキレ兄のスニーカーを預かって行ってしまった。
プーチンを乗せたまま、車はさっさと行ってしまったけど、俺はキル兄と一緒にいられる。
「キレ兄、今までどうしてた?」
当然、答えは返ってこない。
でも気にはならなかった。
微笑むキレ兄を見ていたらどうだってよかったんだ。
「キル兄は大変だったんだよ」
俺は一方的に話しかける。
きっと興味ないか面倒なんだろう。
「いろんな夢を見て魘されて、キレ兄を探してたんだ」
誰も居ない裏路地に俺の声だけが響いた。
キレ兄が立ち止まる。
「寂しかった」
ぽつりと溢れた言葉に戸惑う。
返事なんて期待してなかったから。