地獄に居る筈のキミへ

□二章
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「やっぱり俺とキル兄が居なくちゃダメだろ?」

自然と溢れた笑顔に、俺は胸を張って見せた。
無表情なその人が少し唇の端を持ち上げるのがなにより嬉しかった。

急に遠くで物音がした。
キレ兄も気づいたらしい。
俺の手をぎゅっと握る。

腰の剣に手を伸ばし、そっとキレ兄の顔を見上げる。

「どうする?」

尋ねた俺からキレ兄は黙って剣を取り上げる。
武器ならいらない筈だと見ていたら、そのまま俺の手を引いて駆け出した。
走るのに邪魔だろうと気をつかってくれたのかもしれない。俺にあわせてくれているらしかったけど、心配はいらないぜと速度を上げた。

しばらく走ると細い路地に駆け込み、キレ兄から剣をひったくった。

「スカイ」

俺は笑ってキレ兄の背中を押した。

俺なら平気、先行って

そういうと剣に手を掛けて、ゆっくり引き抜く。

追ってきたのがミリツィアじゃなかったのは結構驚きだったけど、肩の刺青で別のファミリーのマフィアだと気づいた。

キレ兄が邪魔なのは分かるけど、こんな雑魚を向けられると結構ムカつく。

剣を振り上げると連中は驚いた様子で後ずさる。

今更おせえよと俺は振るう。
生暖かい血を浴びて、俺はため息をつく。
これで俺は超目立つ格好になっちまった。

ため息をつきながら剣から雫を払うと、急にキレ兄がおれの肩を突き飛ばした。
まっすぐ伸ばした手には銃弾。
さらっと銃声とともに髪が靡く。綺麗すぎるその横顔に身動きできなくなる。
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