七日間の奇跡

□木高優樹
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留置所の面会室は殺風景だった。
簡易な椅子が置いてあり、しきりがある。
しきりはガラスのような物でできていた。
向こう側、ようするに私達がいる方と逆の方から人が現れた。
中肉中背の、本当に30歳後半ぐらいの男だ。
彼は堂々と歩きながら、私達としきり越しに対面する。
「こんにちは」
彼の声は何の動揺も感じさせない、落ち着いた物静けさがあった。
「君達が、僕が轢いてしまった子のお友達かい?」
「はい・・・」
殺人犯と会話している。このことがなによりも私の恐怖心を煽った。
「私はね、本当に申し訳無いと思っているんだ・・・」
「人を殺したことに対してですか?」
裕が聞いた。声には少し怒気が混じっていた気がする。
「いや、人はいつか死ぬんだ」
「あなたが殺した」
「殺した・・・その通りだ。しかし・・・後悔はしていない」
殺人犯から反省の色も後悔の色も感じられない。
私は絶望した。恐怖を通り越し、目の前の殺人犯に絶望したのだ。
足が小刻みに震えだす。
逃げたい・・・。逃げ出したい・・・。
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