奉還師

□ACT16
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本日の天気は晴れ。
青い空に白い雲が僅かに浮かび、吹き抜ける風は心地良い。
こんな日はアキラと一緒にピクニック、なんていいな。



「コンラッド!!」



アキラの事を考えていたらアキラに名前を呼ばれた。
やっぱり俺達は相思相愛だな。

でも語尾にハートマークが飛びそうなほど高く上げられた声に一瞬首を傾げた。



「コンラッド〜。」



猫なで声、と云うのか。
女性独特のその声はアキラ以外ならムカついていただろう。

ちょこん、と俺の隣に腰を下ろし見上げて来るアキラ。
・・・どうも可笑しい。



「アキラ、どうかしたのか?」
「何が?」



何が、と云われれば全てが。
普段確かに俺の方が身長がある為自然と見上げる形ではあるが。
今日はそれに媚び、のようなものを感じる。



「こんな私は嫌い?」
「いや、嫌いと云うか・・・。」
「じゃあ俺なんてどうだ?」
「え?」



・・・・・・俺は夢でも見ているのだろうか。
アキラとは反対側にまたアキラ。
先程のアキラが女性的なら此方は男前。



「満足させてやるぜ?前も、後ろもな。」



こんな挑発的な瞳は今まで見た事はない。
確かに二人とも外見はアキラだ。
でも、何かが違う。



「コンラッド?」



そして三人目のアキラ。
何故かその後ろでサキが慌てた顔をしている。



「浮気は私ダメだと思うよ!うん!」



何を考えているかと思えば!



「変な事云わないで下さい。それによく見て!」
「え!?晶!?」



その時初めてサキは俺の周りにいる人物の顔を確認したようだ。
それぞれ三人の顔を見て目を白黒させている。
過ぎるのは以前偽封印師を語った男がアキラにバケた事があった。
三人のうち二人はそう云う類だろうか。



「邪魔しないでくれる?半端者さん?」
「・・・何だと?」



女性的なアキラがサキ側に居たアキラに云う。



「新手の嫌がらせか?」
「・・・違うな。俺はお前がなりたかったお前。」



今度はサキ側にいるアキラから、男性的なアキラ。
・・・・・・訳が判らなくなってきたぞ。



「行くぞ。」
「えー!?」



男性的なアキラが立ち上がり背を向ける。
その行動に女性的なアキラが不満の声を上げた。
然しその声が聞こえていないかのように男性的アキラは歩を進めると突然姿を消した。



「今度はちゃんと遊んでね、コンラッド。」



そしてまた女性的なアキラも。



「「「・・・・・・。」」」



一体、何がどうなっているんだ?



「と、とにかく追わないと・・・。」
「行くな。」



いつの間にか残ったアキラは俺の服の裾を掴んでいた。



「でも!?」
「行かないでくれ。」



掴んでいる指先が震えていた。
顔は血の家をなくしたように白く、蒼い。



「アキラ・・・。」



俺はまだこの時気付いていなかった。



あの二人の耳にブラウンダイアのピアスが付いていた事に。





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