奉還師

□ACT6
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「・・・・・・。」



妙に暖かいなと思いながら目覚めればコンラッドの腕の中。
厚い胸板は無条件に安心を与える。
頬を緩ませながら俺は二度寝を決め込んだ。
胸に付けたネックレスのサクリアがカチリと音を立てた気がした。



――――昨日。



「晶、これを。」
「これは・・・。」



ウルリーケちゃんから渡されたものに、只驚く事しか出来なかった。
もう二度と見る事はなく、思い出になって行く筈だった。



「・・・サクリアだよ。」



これが出て来るって事は、これを使わなきゃならない事が起こるって事だ。



「おい眞王居るんだろ!?」



俺は奥へと足を踏み入れ、眞王の姿を捜した。
奴は俺がそうするのを判っていたかのように現れる。
俺は感情のまま怒鳴りつけた。



「一体如何云う事だ!説明しろ!」



前のようにふてぶてしい笑いはない。
彼に浮かんでいる感情は読めないが、何処か遠い目をしていた。



『・・・想いは時に自然を動かす。だが想いだけでは自然に勝てない。』
「回りくどい言い方すんな!」
『・・・ならば率直に云おう。お前の両親が死んだ原因で在る火事。あれは報われなかった想いが引き起こした可能性が高い。』
「なん・・・だっ、て?」
『確証はないがな。』
「・・・・・・。」



云ってる意味が判らなかった。



『判るな?想いは形がないが故に何にでもなりうるのだ。奉還師の力となってくれ。』
「それは、そのつもりだが・・・。」
『・・・・・・巡り合うかもしれんな。何時か、その火事を起こした想いを発した人物と・・・。』



それだけを告げて眞王は姿を消した。

火事の原因・・・、報われない想い。

考えた事もなかった。
あの火事が誰かによって起こされたものなんて。

・・・だから父さん達は逃げなかった・・・?

俺の中にどろどろとした感情が込み上げる。
もし今そいつが目の前に現れたら俺は如何する?



「俺、部屋に戻るわ。・・・説明は明日するから。」



判ってる。
ちゃんと皆に説明しなければならない。
でも今はそんな事出来る気分ではない。



「アキラ・・・、俺も一緒に・・・。」
「悪い・・・、一人にしてくれ・・・。」



コンラッドが心配してくれてる事は判る。
だからこそ一緒に居る事は辛い。
・・・・・・今の俺は限りなく醜い。

もし、もし父さん達を殺した奴が現れたら、俺はそいつを・・・。

・・・殺してしまうかもしれない。



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