存在
□第二話
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「お父様。」
私たちは城に戻ってすぐ、インゴベルト陛下、つまりナタリア様のお父上様の私室へと向かった。
ナタリア様はツカツカと陛下に歩み寄る。
陛下は書類から目を離し、ナタリア様を見る。
「おぉ、ナタリア。どうしたのだ?」
「ヴァン謡将の件についてですわ。」
「うむ、ヴァンの件か。」
ヴァン、という単語を聞いた瞬間、陛下はあからさまに顔を顰めた。
「ルーク本人がヴァン謡将は関係ないと言っていましたわ。容疑を晴らすわけにはまいりませんの?」
「私も本気でヴァンがやったとは思ってはおらぬ。だが・・・・・・。」
「失礼します。」
陛下が言葉を濁された時、一人の兵士が入って来た。
「何事だ?」
陛下もナタリア様も私もいっせいに彼を見る。
兵士は敬礼をし、言った。
「報告します。只今バチカル港からおよそ10kmの地点に、グランツ謡将が乗っていると思われる船を確認しました。」
「「「!!」」」
まさに噂をすれば影。
こうもタイミングよくヴァン謡将の名が出るとは・・・・・・。
「いかが致しましょうか?」
兵士が陛下の指示を仰ぐ。
「シェンラ。」
「はっ!」
陛下が私の名を呼び、私は敬礼する。
「今すぐ港に向かい、ヴァンを捕らえよ。」
「「!?」」
私もナタリア様も陛下のお言葉に目を見開く。
「お父様!?」
当然反論に出るナタリア様。
「・・・・・・よろしいのですか?」
私もナタリア様同様異議を唱えたい衝動を抑え、努めて冷静になる。
「・・・・・・行け。」
「御意。失礼致します。」
私は踵を返し、その場を去った。
バチカル港へと向けて・・・・・・。
残されたナタリア様と陛下はというと・・・・・・。
「お父様・・・・・・。」
「すまぬ、ナタリア。ヴァンについては私にも考えることがあるのだ。」
「・・・・・・何ですの?」
「・・・・・・これから会議を開く。そこで明らかとなろう・・・・・・。」
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