存在
□第三話
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今朝方、ルーク様に使者をお遣いし、私たちは謁見の間にてルーク様をお待ちした。
扉を開けて入って来たのはルーク様。
そしてヴァン謡将の妹君、・・・・・・確かティア殿でしたか。
最後に入って来て定位置に着いたのは、大詠師モース。
「おぉ、待っていたぞ、ルーク。」
アルバイン伯爵が歓待の意を示された。
「昨夜緊急会議が招集されマルクト帝国と和平条約を締結することで合意しました。」
「新書には平和条約の提案と共に救援の要請があったのだ。」
「現在マルクト帝国のアクゼリュスという鉱山都市が障気なる大地(ノーム)の毒素で壊滅の危機に陥っているということです。」
大地の毒素・・・・・・、それは障気のこと。
短期間ならば、それほど問題にはならないのだが、長期間さらされれば結果死んでしまうこともある。
「マルクト側で住民を救出したくてもアクゼリュスへつながる街道が障気で完全にやられているそうよ。」
「だがアクゼリュスは元々我が国の領土。当然、カイツール側からも街道がつながっている。そこで我が国に住民の保護を要請してきたのだ。」
「そりゃ、あっちの人間を助けりゃ和平の印にはなるだろうな。」
ルーク様の言う通り、マルクト側の国民を助ければ立派な和平の印。
その上、マルクト側に貸しができる。
キムラスカ側からすれば、願ってもない話だろう。
「でも俺に何の関係があるんだよ。」
「陛下はありがたくもおまえをキムラスカ・ランバルディア王国の親善大使として任命されたのだ。」
「俺ぇ!?嫌だよ!もう戦ったりすんのはごめんだ。」
ルーク様は思いきり眉間に皺を刻まれる。
マルクトへと飛ばされた時に、余程の思いをされたのでしょう。
「ナタリアからヴァンの話は聞いた。」
「!」
ヴァン、という単語が出だ瞬間、ルーク様の様子が豹変した。
「ヴァンが犯人であるかどうか我々も計りかねている。そこで、だ。お前が親善大使としてアクゼリュスへ行ってくれればヴァンを解放し協力させよう。」
「ヴァン師匠は捕まってるのか!?」
言葉は柔らかいが、これは事実上、断ればヴァン謡将がどうなるかわからないという脅しだ。
「城の地下に捕らえられているわ。」
捕らえたのは私。
ルーク様に対して少し罪悪感が残る。
「・・・・・・わかった。師匠を解放してくれるんなら・・・・・・。」
ルーク様もそれがわかっているのか、いないのか。
しぶしぶ了承なさった。
「ヴァン謡将が関わると聞き分けがいいですね・・・・・・。」
「うるせぇ。」
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