存在

□第六話
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バチカル廃工場を更に奥へと進み、そろそろ出口ではないかと思い始めたころ。
ツーンと嫌な臭いが辺り一面に漂ってきた。



「なんか臭うな。」
「ひどい臭いです。」
「油臭いよぅ!」
「この工場が機能していた頃の名残かな?それにしちゃ・・・・・・。」



その時聞こえて来たのは、キィィィっという何となく嫌な音。



「待って!音が聞こえる・・・・・・。・・・・・・何か・・・・・・いる?」
「まあ、何も聞こえませんわよ。」
「いえ・・・・・・、私にも聞こえました。何かが擦れるような音が・・・・・・。」
「ええ・・・・・・いますね。魔物か?」



みんなそれぞれに警戒態勢を取る。
確かにすぐ近くに『何か』がいるのだ。



「危ない!」
「ナタリア様、下がって!」



その存在に気づき、私とティア殿は同時に叫んだ。



「!」



ティア殿がナタリア様を突き飛ばし、さきほどまでナタリア様がおられた位置には、魔物が・・・・・・。



「うわっ!きたーっ!」



その姿はなんとも形容しがたいもの。
足のように見えるその先端には立派なカギヅメ。
ゼリー状をして、体から油の臭いを放っている。



「この臭いはこいつだったのか。」
「でしょうね。」
「行くぞ!」



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