存在

□第十六話
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後もう少しでデオ山脈を抜ける、と言うその時。
パァァンと言う渇いた音が辺りに響いた。
ルークの足元には煙が上がっている。
そう、ルークの足元に弾丸が放たれたのだ。



「止まれ!」



声のした方を見ると、そこには一行がいる所よりも幾分高い所に人影。



「ティア。何故そんな奴らといつまでも行動を共にしている。」



金髪の髪を上方でまとめ、両手に銃を握り締めた女性。



「モース様のご命令です。教官こそどうしてイオン様をさらってセフィロトを回っているんですか!」



そう、彼女の名はリグレット。
六神将の一人であり、またティアの教官でもあるのだ。



「人間の意志と自由を勝ち取るためだ。」
「どういう意味ですか。」
「・・・・・・この世界は預言に支配されている。何をするのにも預言を詠みそれに従って生きるなどおかしいとは思わないか?」



預言・・・・・・。
それは始祖ユリアが広めた未来を示す言葉。



「預言は人を支配するためにあるのではなく、人が正しい道を進むための道具に過ぎません。」
「導師。あなたはそうでもこの世界の多くの人々は預言を頼り支配されている。酷い者になれば、夕食の献立すら預言に頼る始末だ。おまえたちもそうだろう?」
「そこまで酷くはないけど・・・・・・。預言に未来が詠まれてるならその通りに生きた方が・・・・・・。」



未来が言葉にして見える。
これほど安心できるものは他にはないだろう。



「誕生日に読まれる預言はそれなりに参考になるしな。」
「そうですわ。それに生まれたときから自分の人生の預言を聞いていますのよ。だから・・・・・・。」
「・・・・・・結局の所預言に頼るのは楽な生き方なんですよ。もっともユリアの預言意外は曖昧で詠み解くのが大変ですがね。」
「そういうことだ。この世界は狂っている。誰かが変えなくてはならないのだ。」



それが結果人々を預言へと依存させる。



「ティア・・・・・・!私たちと共に来なさい。」
「私はまだ兄を疑っています。あなたは兄の忠実な片腕。兄への疑いが晴れるまではあなたの元には戻れません。」
「では、力ずくでもおまえを止める!」



リグレットは飛び降り、銃を振るった。



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