奉還師

□ACT3
2ページ/3ページ




「如何しよう・・・。」



やはり部屋で大人しく誰かが呼びに来るのを待てば良かった。
確かに私は知ってた、知ってたのに・・・。



「何でこんなに広いかなぁ?」



迷子です、建物の中で初めて迷子りました!
まだちょっと時間が早いのか人の気配はなし。
心細い時の一人と云うのは、ものすんごく辛い。

やだなぁ・・・、泣きそう。

私はその場にうずくまった。
憧れはなりえないからで、有り得ないから夢に見る。



「如何してこうなっちゃったんだろう。」



最後の方は鳴咽になって消える。
頬に冷たい感触が走った。



「ちょ、大丈夫!?」
「・・・・・・っ!」



顔を上げた先には有利。



「どっか痛い?あ、腹とか?」



心配そうな彼の顔を見て、何で此処にいるんだろうとか考えられなくて。

感情はコントロールする事が出来るのかな。



「うわぁぁぁぁん!!」
「うぇぇぇ!?」



少なくとも私には出来ない。
誰か、その存在に安心した瞬間、私は泣いてしまった。
大声でなんて小さい子じゃないんだから。
そんな事を片隅に思いながらも止める事は出来なかった。



「えっと・・・・・・よしよし?」



温かい。
真っ赤になりながらも、何とか慰めようとしてくれる有利の体温が。
私の涙を促した。



「俺達はこれから何度、彼女を泣かせるんだろうな。」
「判らない。でも僕達には彼女しかいないんだ。」
「そうだな。だからこそ、俺達が彼女を支えてやらないと。」
「・・・うん、そうだね。」



次→
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ