存在
□第三話
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「しかしよく決心してくれた。実はな、この役目おまえでなければならない意味があるのだ。」
よく決心してくれた・・・。
本当はそうなるように仕向けたといっても、過言ではないのに・・・・・・。
「・・・・・・え?」
「この譜石をごらん。これは我が国の領土に降ったユリア・ジュエの第六譜石の一部だ。」
「ティアよ。この譜石の下の方に記された預言を詠んでみなさい。」
「・・・・・・はい。」
譜石を持っていた兵士が前に進み出る。
ティア殿はその譜石を受け取り、詠み始めた。
「ND2000。ローレライの力を継ぐ者、キムラスカに誕生す。其は王族に連なる赤い髪の男児なり、名を聖なる焔の光と称す。彼はキムラスカ・ランバルディアを新たな繁栄に導くだろう。」
預言・・・・・・。
この世界は預言によって左右されていると言っても過言ではない。
始祖ユリアが残した預言が偉大なことはわかっているつもりだ。
でもやはり、私はいまだに好きになれない。
「ND2018。ローレライの力を継ぐ若者、人々を引き連れ鉱山の街へと向かう、そこで・・・・・・。・・・・・・この先は欠けています。」
「結構。つまりルーク、おまえは選ばれた若者なのだよ。」
『この子は選ばれたのです。』
陛下の言葉が、あの記憶を呼び起こさせる。
『ですからこの子は我々が保護します。』
私から何もかも奪った、あの日のことを・・・・・・。
「今までその力を狙う者から守るためやむなく軟禁生活を強いていたが今こそ英雄となる時なのだ。」
英雄・・・・・・。
その単語を聞いた瞬間、私の胸に何かいいようのないものがザワザワと込み上げてきた。
・・・・・・何だろうこれ・・・・・・。
「英雄ね・・・・・・。」
「何か?カーティス大佐。」
大佐殿がこぼされた言葉が、アルバイン伯爵の耳には届かなかったようだが、私にははっきり届いた。
大佐殿も私と同じような感覚に陥っておられるのだろうか、それとも別の・・・・・・。
「・・・・・・いえ。それでは同行者は私と誰になりましょう?」
そう仰った大佐殿のお顔にはさきほどの、やりきれないような雰囲気はなかった。
・・・・・・気のせいだろうか・・・・・・。
「ローレライ教団としてはティアとヴァンを同行させたいと存じます。」
「ルーク。おまえは誰を連れて行きたい?おおそうだ。ガイを世話係に連れて行くといい。」
「何でもいいや。師匠がいるなら。」
「お父様、やはり私も使者として一緒に・・・・・・。」
「それはならぬと昨晩も申したはず!」
急に陛下が声を荒げられたので、なにごとかと振り向く。
「・・・・・・どうかなさいましたか?」
「・・・・・・なんでもありませんわ。」
ナタリア様は腑に落ちないという顔をなさっていた。
「伯父上。俺、師匠に会ってきていいですか?」
「好きにしなさい。他の同行者は城の前に待たせておこう。」
ルーク様が謁見の間を出られ、私たちもそれぞれ散った。
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