SHOTBAR
□Cherry blossom
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「うん、それだけだよ。でもそれじゃあツマラナイだろうからさ。そんな神ノ木ちゃんにステキなサプライズ!…はい、これね!」
ゴドーに投げてきたもの、それは「鍵」。
「資料室の、ロッカーの鍵だよ。面白いもの、入ってるからさぁ。神ノ木ちゃんにあげるよ!」
「クッ…上質な珈琲豆ならば歓迎するぜ…じゃあな」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
―――資料室 PM 6:00
(…サプライズ、か)
ゴドーはベストから鍵を取り出し…何となく、それを眺めた。
古い、傷だらけの…鍵。
(鬼が出るか…蛇が出るか…)
煙草を揉み消す。その残り香がツン、と鼻をつく。
(何れにせよ、ロクなもんじゃねぇだろうぜ…)
嫌な予感だけはよく当たる。
…師のジイさんから『死神の予感』と、大層な命名まで付けられていた、己の勘。
ふと…死神が囁く。
毒を飲み干した
あの時と同じ間合いで。
《…アケルベキデナイ》
そう、囁く…。
(…しかし、だ)
あの厳徒が…あれ程素直な役割を己に与えるとは考えられなかった。
その可能性は…ゼロ。
(とんだパンドラの箱だぜ…)
――カチャリ…。
手荷物程度が収納出来る、その中には……
(なんだこりゃあ…?)
そこにあったのは…ポータブルのDVDプレイヤーであった。ご丁寧にも液晶付きである。
(クッ…死神の予感は、もうアテに出来ねぇな…)
それを取り出すと、小さな付箋が付いており一言、【再生】、と書かれていた。
(ジジイになると回りくどくなるらしいぜ…)
不審にも感じず、それに従う。
ブゥン…と電源が入り、その中身が明らかになった時………。
《アケルベキデナイ》
死神の囁く声までも……
もはや、届かない。
厳徒海慈の高笑いが…
空耳に、痛く、響く。