SPIRITS-BAR
□虎
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虎はのォ…
1度噛み付いた獲物は
忘れへんのや
ワレのその身体
ワイの牙で
喰ろォたるで…
‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡
虎 −The dragon which I was seized with−
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(――ここは、何処だろう……)
目覚めれば…
後頭部に、鋭い痛み。
身動きの取れぬ、身体。
目を開けても、視界はただ闇が広がっているだけ。
(夢…なのか…でも…)
夢では有り得ぬ、痛み。
……訳がわからない。
(確か…僕は……)
検事局からの帰り道を歩いて…
(いさみやに寄って…)
マヨイちゃんに頼まれていたトノサマンスナックを買って…
(ホッとサンドの店…)
近くの路地裏に入って、ホテル・バンドーの裏口が見えて………
―――それから。
意識という…画面が、切れた。
(………………。)
無限を思わせる、この闇の中で…自分の呼吸がやけに苦しい事に、気付く。
(口が…開かない)
開けようとしても、唇を粘着する何かが…それを許さない。
―――もしかすると。
この身動きの取れなさ。
ズキリとする痛み。
何かに閉ざされた、口。
(夢じゃない……)
五感の全てを集中させると…鼓膜が微かに震える。
呼吸…多分これは、寝息。
(誰かが、近くに居る…)
困惑し混乱する脳が、ふと……ある言葉を連想させた。
途端に、ゾクリと…身の毛がよだつ。
成歩堂のシノプスが自ら導き出した、その言葉……
―――《拉致監禁》